第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
ほの花からは案の定、連絡は来ない。
薬剤師やるだけあって真面目な性格なのだろうが、少しだけ期待していただけあってガッカリしてしまう。
「ねぇ〜、天元ー!!どこか行こうよ〜!」
「…えー?どこかってどこに…?」
「どこにって…どこでもいいけど、お出かけしたい!!せっかくの休みなんだよ〜?家にいるだけなんてつまんないじゃん!」
伊織がそう言ってきたのは昼前のこと。
付き合ってからというもの休みの前の日になるとこうやって伊織が泊まりにくるのはいつものことだ。
しかし、ほの花からの連絡を待っているオレがスマホを気にしてしまうのもまた仕方のないことで、部屋の中に人がいることに少しだけ鬱陶しさも感じていた。
こんなことを彼女に感じるのは絶対に間違っている。それも分かっているから何も言い返せずに誘われるがまま外に出た。
どうせ家の中にいてもほの花のことを考えて悶々としてしまうのだ。
土曜日と言うのはどうしてこうも人がごった返しているのだろうか。
手を引かれて連れてこられたのは賑やかな都会。
少し電車に乗ればこうやって賑やかなところに来れるところに住んでいるのはなかなかありがたいが、すれ違う人の波にはうんざりしてしまう。
(…暇人ばっかりかよ。)
かく言う自分も暇だからこんなところに来たと言うのに、少しばかりほの花から連絡が来ないからと言って心の中でやっかみをしてしまっている。
楽しそうにあっちへ行こう、こっちへ行こう!と手を引いてくる伊織の好きにさせようと彼女に手を引かれるがまま歩いていると、少し先に見えた栗色に目を見開いた。
見たことのある栗色の髪は他の女よりも頭半分ほど抜きん出ていて、白いTシャツにデニムが彼女のスタイルの良さを際立たせている。
見間違えるわけがない。
先ほどまでその女のことばかりを考えていたのだから。
オレは此処にきて初めて伊織に引っ張られていた手を外してズンズンと進んだ。
「え、ちょ、天元?待ってよぉ…!」
伊織が後ろから腕を掴んで付いてきたが、振り払うこともせずに一直線に栗色を目指して突き進んだ。