第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
「…っ、えー、ど、どうしても駄目ですか?!」
「駄目だ。お前が他の男の目に触れること自体が死ぬほど嫌だ。」
「えぇ…?私は男探しの旅に出かけるわけじゃないんですけど…。」
「てめぇ、当たり前だろうが!俺がいるだろ!」
"俺がいるだろ"
そう。貴方がいます。
なのでそんなことはあり得ないのだということがなぜ分からないのだろうか。
「…宇髄さん、私…そんなに浮気しそうですか…?」
流石に少し悲しい。
もちろんこうやって嫉妬を全面に出してくれるのは嬉しい。愛されてると実感できるし、彼の独占欲は私にここにいて良いと教えてくれるから。
でも、浮気しそうだと思われてこんな風に止められているならば話は別だ。
私は宇髄さんを愛してるし、他の人を見たりなんてしないのに。
「…そ、そうじゃねぇけど…」
「じゃあ何でそんなに疑うんですか…?」
「お前がクソ可愛いから。」
「…意味がわかりません。」
その発言は理由になっているのだろうか。
どこの世界にそんな理由で人の浮気を疑う人がいるのだ。いや、ここにいるけど。
「分かるだろ!クソ可愛いから男が寄ってくるだろうが!俺は心配でたまんねぇの!」
そうは言っても鬼殺隊の柱ともあろう人が私の実力を計れない訳ではなかろう。そんじゃそこらの男ならば返り討ちにしてやれると思うし、この前みたいに怪我さえしてなければすぐに逃げられるのに。
「…寄ってきませんよ。この19年間誰も寄ってこなかったんですよ?」
「それはほとんど里にいたからだろ。町を歩けばお前を見てる男がどれだけいるか分かってねぇ!」
「……見てな…「見てる。」」
「………見てな…「見てるって言ってんだろ。」」
堂々巡りとはまさにこのこと。裸で彼に抱きしめられたままで、先ほどまで熱い情交で愛を確かめ合ったはずなのに今は口論に発展しそうなほど緊迫した空気が流れている。