第49章 【番外編】色褪せない想い【現パロ】※
「……本当に眠れないの?」
「だからそう言ってるでしょ。」
「……き、君が?」
この会話は彼此3回目。
眠剤欲しさに心療内科に来てみたが、要するに疑いを持たれるほど体も心も健康そのもののオレに医者が再三確認してくるのは無理もない。
実際寝れないわけではない。
変な夢に起こされるだけ。
ただ"眠剤"に拘っているわけでもない。
もらえるならば何でも良かった。
とにかく薬が欲しい。
薬局に行きたい。
……アイツに、会いたい。
「…分かりました。信用してないわけではないですが、眠剤を転売する人がいるのでまずは3回分だけ出します。その後、また必要なら来てくれますか?」
「ああ、なるほどね。分かりました。じゃあ、それでいいです。」
医者も大変な仕事だ。
要するに転売する輩がいるからオレみたいな健康そのものの人間に眠剤を処方するのは躊躇するのだろう。
実際、精神を病んで眠剤を飲むわけでもないので若干の申し訳なさに襲われるが、今回は目的があるので少なくとも文句は言えまい。
むしろいくつであっても処方してくれることに意味があるのだから。
かかりつけの薬局があるか聞かれたのでもちろん秒でほの花がいる薬局を指定した。
何でこんなにも会いたいのだろうか。
一目惚れでもしたのか?
もちろんそうかもしれない。
だが、それもどうもしっくり来ないのだ。
一目惚れとは違う。
昔からアイツを知っていたような感覚なのだ。
不思議なのだが、アイツを見ると胸をギュッと鷲掴みにされて、切ないような嬉しいような何とも言えない気持ちにさせられる。
会計を済ませて処方箋をもらうとお目当ての薬局まで走って行く。
五感全てがアイツを知っているような気がしてならない。
そんな感覚は日に日に増えていくばかり。
優しくふわりと笑った顔も
困ったように眉を顰める顔も
香水かボディークリームか知らないが花のような香りを漂わせる
栗色の髪に黒めがちの瞳の女。
「…早く、会いてェな…。」
会いたい気持ちが背中を押す。
恋人にすらそんな感情を持ったことがないオレは申し訳ないと思いつつ、止めることができなかった。