第48章 【番外編】宇髄家のこんな一日
隆元とまきをが甘味処に行ってしばらくした頃、炊事場では雛鶴とほの花が夕食の支度を始めていた。
電気の普及によって以前よりも楽になりつつある炊事だけど、釜で炊いたご飯のが美味しいこともあり、宇髄家では未だに炭を使うこともある。
それこそ炭治郎からわざわざ買い付けることもある。
「良いなぁ…まきをちゃんと隆元。私も豆大福食べたいなぁ。でも、来週、お汁粉…。」
「ふふ、ほの花ちゃん?天元様に怒られちゃうよ。ちゃーんとごはん食べましょうね?」
「う…、分かってるよ…。」
だいぶ良くなってきたとはいえ、ほの花の体は昔に比べるとまだ弱々しい。
風邪をひけば長引かせるし、熱が出ればすぐに高熱を引き起こす。
天元が栄養管理にまで口を出すようになったのは無理もないのだ。
「私、お米見てくるわね。ほの花ちゃん、煮物お願いできる?」
「うん。いいよ。やっておくね。」
宇髄家には四組の夫婦が共同生活を送っているのだから家事は分担している。今日の夕食の担当は雛鶴とほの花。
こうやって分担制にしておくと普通の家よりも遥かに楽だし、楽しんで家事ができるのもあって嫁四人は家事を負担に感じたことは一度もない。
お米の様子を見るため、雛鶴が勝手口から出てて行くとお米の良い匂いが漂っている。
食欲を唆るその匂いは通常であれば皆、炊き立てを食べたいとうずうずするものだが、匂いを感じた雛鶴は咄嗟に口を押さえた。
込み上げてくるものを感じたからだ。
「ぅ…っ!」
──ガタン
咄嗟にしゃがみ込めば、置いてあった桶が音を立てて倒れた。
その音に気付いたほの花が不思議そうに顔を覗かせたが、その光景を見て目を見開いた。
「っ…雛ちゃん?!」
煮物の火を止めて近寄れば、口を押さえて苦しそうに蹲る雛鶴の姿。
薬師であるほの花は所謂医療者。
その様子にすぐに駆け寄ると背中を撫でた。
「雛ちゃんどうしたの?!大丈夫?!」
引き攣らせた笑顔で頷く雛鶴だがその様子はとてもじゃないが大丈夫そうじゃない。