第48章 【番外編】宇髄家のこんな一日
珍しく誘いに乗ってこなかったほの花に拍子抜けしつつも、天元の言っていたことが分からないでもないまきをと隆元。
身支度を整えると二人で屋敷を出た。
「ほの花ちゃんったら、昨日豆大福20個も食べたんだね。そりゃあ天元様に反対されるわ。」
「当然だと思う。そもそもほの花様は甘味に関しては無駄に鼻が利くというか…。食い意地張ってるからなぁ。」
「あはは!隆元様、酷くない?!元主人でしょう?」
そう。隆元、大進、正宗の三人はほの花の元護衛。
幼い頃より知っているほの花のことは主人ではあっても妹のような存在でもある。そして、今や主従関係は解消されているが、昔の癖で『ほの花様』などと呼んでいても前より妹扱いが増えたのは間違いない。
「それはそうだけど、宇髄様があれくらい管理してくれないと一日中甘味を貪り食うに決まってるよ。」
「あー…そういえばこの前も隠れてみたらし団子食べてて怒られてたよね!」
「元主人だと言うことをもう忘れたいくらいだよ。だけど、だからこそ宇髄様が近くにいてくれてよかった。」
二人きりでいても天元とほの花の話が話題に上がることは多い。
ついつい話に夢中になっていると、前から人が歩いてきた。
こちらを向いて笑顔で話をしているまきをはその存在に気付いていない。
「…まきを。」
「え…?あ、…ありがとう…!」
すぐさま隆元がまきをの腰を引き寄せるとぶつからずに済んだのだが、思わぬところで隆元の体に密着することになって顔を赤らめるまきを。
二人の関係性は夫婦。
これくらいの触れ合いはしているに決まっているが、外でされるのと家の中ではわけが違う。
すっかり恥ずかしそうに顔を下に向けるまきをに優しく笑うと隆元は彼女の頭を撫でた。
「まきをのそういう恥ずかしがり屋のところは可愛いと思う。そうだ、たまには手でも繋がないか。」
「え、え、…えと、………は、ハイ…。」
ほの花に負けじ劣らず甘え下手のまきをからすれば隆元の申し出は願ってもいないこと。
顔を綻ばせながら手を差し出せば、温かな手に包み込まれた。