第48章 【番外編】宇髄家のこんな一日
「天元様とほの花ちゃん。今日、隆元様と甘味食べに行くけど行きます?」
「え?い、いき…」
「やめとくわ。」
庭の掃除をしていた須磨と大進を連れ立って、居間に向かうと八人の大所帯の朝餉が始まる。
まきをと隆元は今日、昼頃から甘味処に行こうと話をしていたので、甘味大好きなほの花を誘ってみたのだが、食い気味に断ってきたのは天元だった。
「…えええ…!い、行きたい…!何でー?!」
「昨日、カナヲのところで豆大福を20個食ったことを俺が知らねぇとでも思ってんのか?」
「な!?何故それを…?!」
昨日の昼は友人であるカナヲとアオイが住む元蝶屋敷に行っていたのだ。
ほの花が訪れればいつもたくさんの甘味を準備してくれてるので、密かな楽しみ。
天元がいると、いつも食べ過ぎないように口酸っぱくなるまで言われるので、女子のみで会うこの時間は思いっきり甘味を堪能できるチャンスなのだ。
「そんなの虹丸が知らせてくれたに決まってんだろ?舐めんなよ。元音柱を。」
既に鬼のいない世界になっているが、虹丸はまだ現役で天元の片腕となっている。
「むぅ…。」
「つーわけで、俺らは行かないし、土産もいらんから二人で楽しんで来い。」
「あはは。ほの花ちゃん、残念だったね。また今度行こうね?」
「え、え、て、天元ーー!行きたいいーー!!お願い!!一生のお願いーー!」
「こんなことで一生の願いを使うな。馬鹿な奴だな。」
ほの花が必死の形相で頼み込んでいることに呆れて苦笑いをする天元だが、簡単に許すわけにもいかない。
昨日も甘味を食べすぎて帰ってきたがために夕食にほとんど手をつけなかったほの花。放っておけばちゃんとした食事をせずに甘味で一日終えてしまうほの花に天元が抑止力となっているのだ。
「いい子にしてればまた来週連れて行ってやる。来週新作の汁粉が出るってふたば屋の店主が言ってたぜ。」
「お汁粉…!?まきをちゃん、隆元、いってらっしゃい!!お土産いらないよ!」
大体ここまで来るのに数分を要するのだが、天元からすれば慣れたものだ。
隣でお汁粉に胸を躍らせているほの花の頭を撫でて再び朝餉に向き合った。