第48章 【番外編】宇髄家のこんな一日
「須磨、手を貸してください。」
「え…?手を、ですか?はい、ど、どうぞ。」
意味は分からずとも、そこは素直な須磨だ。
言われた通り両手を目の前に差し出した。
大進は小さなその手を取ると自分の胸に当ててみせた。
温かい大進の肌の感覚は益々昨夜の行為を思い出させて須磨の顔は更に赤が溜まっていく。
そんな彼女に大進は口を開いた。
「須磨?ほら、分かりますか?」
「…え?」
突然、胸に手を当てられた意味がいまだに分からず疑問符が宙を舞う須磨に大進は続ける。
「私だって須磨に触れるだけでドキドキしていますよ。」
「えぇ!そ、そうなんですか?」
「よく分かりませんか?」
実際に須磨は天元のように耳が良いわけでもないので、触れる手の振動だけではイマイチ分からなかったので素直に頷くと、今度はその腕を引かれた。
引かれた先にあるのはもちろん大進の胸で、そこにすっぽり収まれば抱き締められたような形になってしまうので、須磨は頭が沸騰しそうな想いだ。
「た、た、た、大進様?!」
「分かりましたか?ドキドキしてるでしょう?」
「え…?」
あまりに抱擁に驚いてちゃんと聞けていなかったが、耳を押し当てて聞いてみれば、トクントクンと情交の時と同じくらいの鼓動が聴こえてくる。
「…ほら、ちゃんと私も須磨にドキドキしてますよ。こんなに可愛い奥さんなのですから。」
そう言って笑顔を向ければ嬉しくて嬉しくて須磨は顔を蕩けさせた。
恥ずかしそうにコクンと頷けば大進はそのまま須磨の体を力いっぱい抱きしめる。不安が解消するように。
愛してると伝わるように。
「おーおー、朝から庭で盛ってんな。」
「あ、おはようございます。宇髄様。」
「こちとら昨日ほの花を一回しか抱けなかったっつーのに。あーーー!ムラムラするぜ!!」
「ちょっと、何言ってんの?!天元の馬鹿!!」
突然現れたのはこの家の主人と自分の元主。
まさか見られていたとは思わない須磨が放心状態でその光景を眺めることしかできないが、体に残る抱擁の感覚に顔はにやけたままだった。
「…大進様、大好きですぅ!!」
何の脈絡もなく抱きついた須磨を分かっていたかのように抱き止める大進。
そんな彼らを見つめる天元とほの花も何だかんだ穏やかな顔を向けていた。