第47章 【番外編】貴方とならばどこへでも※
「どうぞ、ごゆっくりなさって下さいね。」
「おう!ありがとな。」
「いえいえ。」
琥太郎くんのお母さんに部屋に案内されて荷物を下ろすと部屋からの綺麗な眺めに思わず窓に近寄った。
「わぁ…!綺麗…!!」
「だな。部屋に温泉もついてるし、よし…!」
「……それって何の『よし!』なの?」
「あ?だってお前がへばって意識失ってもすぐに運べんだろ?」
「…一回しかしないからね。運んだ先の布団でもシようなんて思わないでよ。どっちがいいかちゃんと吟味してね?」
今の言い方だと、少なく見積もってもお風呂で一回、布団で一回な言い方だ。
それだけで済まない可能性だってある。
昔は朝まで抱かれ続けたことも無きにしも非ずだが、その時だって私は最後らへんは意識はない。
最後、天元がどうやって果てたかなんて知らないことが多いのだ。
しかも、いまは病み上がり。
何度も何度も情交に耐えられるだけの体力は皆無。
だからこそ、どこでシたいのかは天元に任せるつもりだった。
…が、"吟味して"という言葉に目をまんまるにして、信じられないと言った顔をするのはなぜだろうか?
私はさっきから再三言っているというのに。
「…嘘だろ…?い、一回…?ど、どっちか?」
「うん。」
「ちょ、ちょっと待て。考える。…べ、別に熱出たら何泊もしやぁいいんだぜ?」
「出ないに越したことはないでしょ?」
「そりゃそうだ。…よ、よし…じゃあ、ふ、風呂にする。温泉でヤれるなんてことはないからな…。」
明らかにしょんぼりした様子の天元が何とかなく可哀想に思えてきた。
もちろん私だって彼に抱かれるのは好きだ。
愛されてると分かるし、大切にしてくれてるから。
大きな体でしょぼんと項垂れた彼を後ろから抱きしめると耳元で『優しくしてくれたら二回できるかも?』と伝えてみた。
その瞬間、ぐるんっとこちらを向いて私を凝視すると腕を引っ張って脱衣所に連れて行かれる。
「え…、え?て、天元…?」
「勃った。」
「はい?!」
「お前が悪い。俺を煽るから。…優しくする。」
脱衣所の引き戸を閉じると宣言通り優しい唇が降ってきた。
慈しむような甘い口付けが。