第47章 【番外編】貴方とならばどこへでも※
「んで?おっさん達は散歩?」
「おい、宇髄さんって呼んでたのどうした?」
「もう辞めた。おっさんはおっさんだわ。」
喧嘩腰になるだいぶ大人げない天元だけど、ここで琥太郎くんの肩を持つとあとが怖いということで私はなるべく丸く収めようと必死だ。
「ま、まぁまぁ…。あ、あのね、天元と旅行に行こうと思ってね!」
「へぇ〜、何処に行くんだよ?」
「まだ決めてないの。」
旅行に行くというのに行き先が決まってないなんておかしいことは重々承知しているのでそんな反応が返ってくると思いきや、『へぇ!』と笑った琥太郎くんに首を傾げる。
「それならさ、母さんの旅館に行ってきたら?」
「え?お母さん?今、家に住んでないの?」
「週末には帰ってくるよ。でも、週の5日間は旅館の手伝いに行ってるんだ。働いてた定食屋の人が新しく作った旅館でさ。家にはこはるもいるし、今は二人で暮らしてるよ。」
いつの間にそんなことになっていたのか。
すっかり寝込んでいる間に、琥太郎くんは大人びていて、お母さんも元気に働いていることに嬉しく思う。
「ええ?!ふ、二人で大丈夫?夜、怖くない?お化け出ない?」
「おい、お前じゃねぇだぞ。未だに夜中に厠にいけないって俺を起こすのお前くらいだぞ。」
「え?そうなの?!みんな怖くて厠いけないんじゃないの?!」
「「ほの花と一緒にすんな。」」
急に手を差し出してぎゅっと握り合う二人を細い目で見つめてみるが、年下の彼にそう言われてしまうとぐうの音も出ない。
「はいはい。そうむくれんなって。可愛い顔が台無しだぜ?そういや、母ちゃん旅館で働き始めたって言ってたな。よし、じゃあそこ行くか。」
「あ、う、うん!」
天元と琥太郎くんは私よりは面識があるようで最近のことでもちゃんと意思疎通が出来ている。
どうも御伽話の浦島太郎にでもなった気分だが、やっと元に戻って来れた気にもなって嬉しくなる。
「きっと行けばすぐ分かると思うけど、道順は…」
琥太郎くんが旅館までの道のりを天元に教えてくれている。
方向音痴ではないけど、喧嘩はしても琥太郎くんの中で天元が頼りになる人という括りなのは間違いなさそうだ。