第47章 【番外編】貴方とならばどこへでも※
「どこに行くの?」
「さぁねー。どこ行こうかね。」
「………ええ?!」
天元から旅行に行こうと言われて早起きして準備をして出てきたはいいが、歩き始めて数分で肝心の目的地を聞くのを忘れていたと思い、質問をしたのだが…
「ま、まさかの無計画…!?てっきりあんなに旅行に行きたいと言ってたから行きたいところがあるのかと…。」
「いや、お前と出かけたかっただけで、特に目的地はねぇよ。ほの花と行けるならどこでも最高じゃん?」
「…天元…。」
こう言う時、天元は恥ずかしげもなく素直に嬉しいことを言ってくれるので簡単に私の心を満たしてくれる。
年上だからとか、経験豊富だからとかそう言うことじゃないと思う。
この人の根っからの性格なのだろう。
「私も、天元とお出かけできるの嬉しい…。一緒にいられるだけで楽しいもん!」
だから私も釣られて素直な気持ちを吐露すれば、甘い空気で溢れていく…のかと思いきや…
「やーめーろーよー。そんなクソ可愛い顔して見上げてくんなって。勃っちまうだろ?」
「んなっ!ちょ、こ、此処は道だよ!大きな声でそんなこと言わないでよぉ…。」
「お前がクソ可愛いのが悪い。はぁ…好き。可愛い…。」
甘いと言えば甘いのだが、こんな道のど真ん中で腕を引かれるとぎゅむっと抱きしめられて頭を撫でられる。
私が寝込みがちになってから天元の過保護が悪化の一途を辿っている気がする。
いや、もちろん心配させた私も悪い。
だが、心配しすぎだと思うのだが…。
「天元〜?そろそろ行こうよ、ね?」
「んー…ちぇっ、そうだな。」
こんなところでイチャイチャしてる夫婦なんてこの町では私たちくらいだと知れ渡っているのではないかと思うほど、天元の愛情表現は露骨だ。
会う人会う人に『今日は旦那は一緒じゃないのかい?』と聞かれることもあるほど。
今日であれば天元と一緒にいるのだから聞かれることはないが、漸く歩き始めた時、後ろから声をかけられた。
「お、ほの花に宇髄さん。久しぶりじゃん。」
「え?」
「おー、琥太郎じゃねぇか。しばらく!元気そうだな。」
そこにいたのは昔、私たちが助けた親子。
今日は琥太郎くんだけだが、元気そうにこちらを見て手を振っていた。