第47章 【番外編】貴方とならばどこへでも※
ほの花を説得した後、善は急げとばかりに俺は同居人に伝えると三日後には旅支度を整えた。
早く行かなければほの花の気が変わってしまったら一大事だ。
こう見えてなかなか我慢していた。
六人がそれぞれ旅に出かけていく中、自分もほの花と旅に行きたいと思いつつ、精神的にも体力的にも万全ではないのに無理矢理連れ出すわけには行かない。
こう見えて新婚だと言うのに、継子時代から一緒にいて苦楽を共にしてきたこともあって、すでに熟年夫婦のような俺たち。
それはそれで凄く良いのだが、俺としてはもっとこう…ほの花とドキドキするようなこともしたい。
ツラいことがあったからこそ、共に人生を謳歌したいのだ。
如何せんほの花が石橋を叩いて渡るタイプな上に遠慮深い性格だ。
どれほど俺が甘やかしても、それに全てを委ねることはしない。
要するに不満だ。
これは恋仲の時代からの俺の人生の目標と言っても良いくらい。
「…お前さ、じいさんばあさんになるまで俺に甘えない気なの?」
「どういうことー?甘えてるじゃん。」
違う。
最近気づいたことがある。
確かにほの花は前に比べたら俺に遠慮なく発言するようになってきたが、俺の欲求に足らないのだ。
埋められない溝はただ一つ。
俺がほの花を甘やかしたい欲とほの花が俺に甘えたい欲が一致しないこと。
「くっそー…。お前がもっとド派手に我儘な女だったら俺もっと満足なんだけどなぁ…。」
「えー…?今の私じゃ、満足できないってこと…?」
「ちっげぇえええ!そうじゃねぇ!俺の気持ちの問題!!!」
「………?」
不用意な発言はできない。
ほの花を悩ませるだけだ。
コイツと結婚できて死ぬほど幸せなのは事実だし、もうこうなったら勝手にやるしかない。
俺はほの花が持っていた荷物を掻っ攫うとそれを片手に持ち、もう片方でほの花の手を取る。
「荷物もてるよ?軽いもん。」
「…持ちてぇの。」
「そう、なの?ふーん…。じゃあお願いします…。重くなったら言ってね?」
なぜそうなるのか。
頭の中を覗いてみたい。
この体格差を見て俺がほの花の荷物を持ってて重いって言ったら相当軟弱者だ。