第46章 【番外編】束の間の休息を君と
「できれば、受け取って欲しい。俺が簪つけると気持ちが悪いと思わないか?」
いやいや、当たり前だろ。
そんなこと考えるまでもねぇ!!
だが、それが分からないのが冨岡だ。
胡蝶も突然、自分が簪つける発言に目をまんまるくしてキョトンとしてしまっている。
しかし、呆然としている胡蝶が口を開く前に横にいたほの花が天然をぶち込んできて俺は頭を抱える羽目になった。
「わ、わ、わたしも、そう思います!!」
「…そうだろう?ほら、神楽もそう言っている。」
「冨岡さんは髪が長いけど、簪はあんまり似合わないと思います!しのぶさんのが似合う!絶対似合います!」
「そうだ。胡蝶のが似合う。俺が付けたら皆に笑われるだけだ。」
「そうです!しのぶさん!!簪は冨岡さんには似合いませ、むぐっ、」
「ストーーップ。よし。ほの花、ちょっと外の空気吸ってこようぜ?」
「むぐ、んん?むーーー!」
ほの花に悪気はない。
ないどころかこの場合、冨岡の背中を押したつもりだろうが、そのせいで甘い空気は皆無だ。
何ならほの花のせいで消え失せた。
天然×天然は暴走する末路しかない。
自分の嫁の責任は自分が取るとして、冨岡は自分でビシッと決めるしかないが、気を利かせてやったのだ。
告白はできずとも贈り物を渡すくらいはやってもらいたい。
腕の中にほの花を抱えると、優しい俺は外に出た。
「むーーー!んぐーー!!」
「お、悪ぃ悪ぃ。」
「し、死ぬかと思った…!」
外に出ても外から様子が見える位置にいるためほの花の口を塞いだままその場で留まっていたのだが、苦しそうに手をトントンと叩くほの花に今の状況を潔く思い出した。
口を覆っていた手を取ってやると肩で息をするほの花だが、それに関しては悪いことをしたとは思う。ただ空気を読んで連れ出した俺を褒め称えて欲しいくらいだ。
「お前な、あそこで口挟んだら胡蝶が入りにくいだろー?」
「へ…?え、あ…そ、そっか。ご、ごめんなさい…。」
「あとで謝っとけよー。全く。ここで様子見てようぜ?」
「う、うん。」
天然ではあるが、素直な性格なほの花がオレの言葉をすんなり受け取るとニコリと笑って隣に並んだ。