第46章 【番外編】束の間の休息を君と
突然、ニヤニヤしながら見上げてくるほの花に驚いたが、こういう時のコイツは何か嬉しいことがあった時と決まっている。
ほの花が嬉しいならばそれに越したことはないが、その理由が何なのか気づいたのは食事をした後のこと。
この時は可愛い笑顔に気を取られてうっかり見惚れてしまったのは惚れた弱みということにしてほしい。
「ほの花さん、最近お身体はどうですか?」
後ろから冨岡と並んで歩いていた胡蝶がほの花にそう声をかける。
割と最近までやれ熱が出た、やれ目眩が酷いだので頻繁に蝶屋敷に出入りしていたので当たり前だ。
やっと体調が落ち着きつつあって、こうやって出歩いても熱を出すことも無くなった。
だが、臥せてる期間が長かったため、すっかり痩せてしまったほの花が心配で今回連れ出した一番の理由。
「あ、えと…今日は大丈夫です!朝はなかなか起きれないことが多いけど…。」
「それなら良かったです。良いんですよ。宇髄さんはほの花さんの世話を焼きたい病なんですから。」
「おいおい、何だよそれは。まぁ、あながち間違っちゃァいねぇけどよ。ほの花しか無理だけどな。他の奴の世話なんてしねぇぞ。」
「はいはい。分かってますよ。あなたがほの花さん馬鹿だと言うことは。柱なら全員周知しております。」
確かに柱仲間にはほの花を溺愛しすぎて心配されていたのは記憶に新しいし、そのせいで一悶着あったのだから当然だろう。
隣で恥ずかしそうに顔を赤くするほの花の手を引き寄せて腰を抱けば益々下を向いてしまったが、そんな姿も見れなくなるところだったのだから今という時に感謝しかない。
「ところでお前ら何してたんだよ?珍しい組み合わせじゃん。」
「たまたまそこでお会いしたんです。」
「あー…なるほどね。」
冨岡は会話に入ることなく、後をついてくるだけだけど、反論はないようで頷いている。
(…まぁ、そんなこったろうとは思ったけどよ。)
冨岡の胡蝶への気持ちに気づいてしまっている人間としては少しばかりヤキモキしてしまうが、奥手なこの男にこれ以上のことを望むことは難しいだろう。