第46章 【番外編】束の間の休息を君と
「あら、宇髄さんにほの花さん。お揃いでお出かけですか?」
「おう!コイツが痩せっぽっちになっちまったからよ。太らせるために牛鍋連れて行くところだ。」
「や!や、痩せっぽっち……!?」
「何だよ、事実だろ?尻なんて骨張ってるだろうが。」
公共の面前で恥ずかしがることもなく、平然と恋人の臀部の話をする元音柱にピキピキと米神が引き攣る。
しかし、話の内容は納得せざるを得ないことばかりだった。
遊郭での戦い以降、ほの花さんは死の淵を彷徨い、漸く意識を取り戻したかと思えば記憶を失っていた。
しかも、それまでの治癒能力の使いすぎにより体は極端に弱ってしまって、つい最近まで床に臥していたのは誰もが知っていること。
一時期、食事を摂ることすらままならなかったのだから痩せて当然。
宇髄さんの言葉にしょんぼりとしている彼女の顔はやはり以前に比べるとさらに小さくなり、着物から少し覗く鎖骨は骨が出てしまっている。
誰もが認めるほど溺愛している恋人の体のことを宇髄さんが気にしないはずがないのだ。
「…宇髄さん?婦女子の体のことを公共の場で言うのはやめて下さいね…?」
「……お、おい…顔が怖いぞ…?!」
「宇髄さんがほの花さんを辱めることを言わなければ怒りませんけどね?」
「す、すいません。」
宇髄さんが柱を引退したことと、失われていた記憶が戻ったことで漸く恋仲らしいことができるようになった二人。
今まではどこに行っても鬼殺隊においての師弟関係が先に浮かんでしまうため、外では極力恋仲のような振る舞いはしてこなかった二人。
まぁ、主にほの花さんが気を遣っていたのだろうが。
だから二人が手を繋いで歩いているのを見ると微笑ましくて嬉しくなってしまうのもまた事実なのだ。
この二人を見ていると、これから鬼舞辻無惨との決戦があることを忘れてしまうほど穏やかな空気に包まれる。
できれば、二人にはちゃんと結婚をして、子を授かり、生涯共に過ごしてほしい。
そうなる為にはやはり鬼のいない世界を自ら掴み取りに行かなければならないのだ。