第43章 【番外編】ここに、いるよ。
捨てられるなんて考えが頭をよぎってしまうと私だって何もせずにいるなんてことはできない。
翌日もしっかり昼寝をかましてしまった後、天元に思い切ってお誘いをしてみることにした。
「天元…!今日の夜は起きてるように頑張るから…、だから…。」
「は?いや、別に良いって。大丈夫だからよ。」
いつもなら『お、ヤル気満々じゃねぇかよ。』とニヤニヤとこちらを見てくる天元なのに今日は真顔で断ってくる。
大事にしてくれてるのは分かってる。
天元は私のことを自分のことよりも考えて、大切にしてくれてる。
でも、ひょっとして結婚したら興味無くなった…とか…?
いや、そんなことはない筈だ。
だってつい数週間前まではシていたのだから。
この数週間の間で私が寝てばかりいるから心配かけているのだろうけど…。
どちらにしても天元の優しい笑みを見ると一大決心をしてお誘いしたが、その先の言葉を言えずに押し黙ることしかできない。
頭の中の引き出しをいくつ開けても空振りする気しかしない。
漸く引っ掴んだ言葉を天元に投げかけても宙を舞うようにふわふわとして心許ない。
「で、でも…私、寝てばかりで最近、太った…、ような気がして…。」
「おいおい、あのな?お前はちょっとくらい太っても良いくらいだわ。ここ数年ですっかり痩せちまったんだからよ。」
「さ、最近は…元に戻ってきてたよ。」
「いや、そんなことねぇよ。俺がお前の目方分からねぇわけないだろ?心配しなくても太ってねぇから安心しろよ。気になんなら少しだけ外散歩すっか?」
すっかり茜色の空を指差してそう聞いてくれる天元に私は肩を落とす。
駄目だ。
確かに天元の方がよっぽど私の体のことを把握している。
あの体調が安定しなかった時もそろそろ熱出そうだとか私より分かっていたし、疲れた時も顔色ひとつで気付いてくれる。
目方が増えたと思っても毎日毎日抱き上げてくれる天元が分からないわけがないのだ。
我儘を言ってこんな夕方から外に散歩に連れて行ってもらうことも憚られたので首を振る。
「…ううん。大丈夫。散歩なら明日行く。」
「そうか。なら明日連れて行ってやるよ。」
「うん。…ありがとう。」
遠くの方で真雪ちゃんの声が泣いてる声が聴こえてきて、余計に胸が締め付けられた。