第43章 【番外編】ここに、いるよ。
子どもが欲しいから情交をしたいと言うのも勿論ある。
それは嘘ではない。
でも、たかが眠いだけなのに天元がすっかり私に触れなくなってしまったことに不安で毎日泣きそうだ。
口づけはしてくれる。
夜寝る前は必ずしてくれるし、事あるごとに目が合えば彼の唇が押し当てられて幸せを感じることはできる。
でも、それだけ。
それ以上、触れてこない。
抱き上げてくれる時だけ体に触れられるのでこちらの方が欲求不満で口を尖らせる。
以前は縁側であろうが、出先であろうが、所構わず厭らしく体を撫で回してきたと言うのに今の天元は全くそんな素振りを見せない。
せっかくお誘いしても秒で断ってきた彼にいよいよまずいと思えてきた。
ちゃんと起きてないと。
やっぱり寝すぎだ。
平和ボケしてるからこんなに眠いんだ。
眠い姿を見せているから心配して触れてくれないんだ。ちゃんと昼間も起きていないと、本当にどんどん彼に触れられなくなってしまう。
毎日彼の愛を受け入れて、愛され続けてきたけど、此処まで受け身だったことに今更ながらに愕然とした。
少しくらい彼に愛される努力をしなければ、飽きられてしまう。
彼の愛を受け入れるだけ受け入れて、私からちゃんと彼に愛を捧げていただろうか。
毎日一緒にいてくれているのだから、不義の心配は…ない、と思いたい。
不死川さんと冨岡さんに会いに行くと言ってたのも本当は違うのか?とも考えたけど、碌でもない考えは身を滅ぼすだけ。
彼の愛を疑いたくない。
「真雪ちゃん、泣いてるから…手伝ってこようかな。」
「おー、そうだな。でも、眠ぃなら無理すんなよ?」
「うん。大丈夫だよ。」
夕方になると黄昏泣きをすると言っていた雛ちゃんの言葉が思い出される。
私も泣きたい気分だ。
確かに夕焼け空というのは感傷的にさせる。
乳飲み子でも感じるのだろうか。
この物悲しい空気感を…
天元に女として見てもらえなくなってしまったのではないかと考えると鼻の奥がツンとする。
こんなことで傷ついている私にはまだまだ母親になる資格はないのだと思い知らされるようで益々泣きたくなった。