第43章 【番外編】ここに、いるよ。
目が覚めると橙色の光が襖から差し込んでいて、天元の銀髪を照らしていた。
キラキラと輝いて見えるそれに見惚れて瞬きをしていると此方に気づいた天元が目尻を下げる。
「…起きたか?ハハッ、まだ眠そうだな。」
「うん…眠い…。私、何時間寝たら気が済むんだろ…。ごめんね。寝てばかりで…。」
最近の私は本当にどうかしている。
疲れなんてない。
溜まりようがない。
だって1日のうち半分以上寝てるのだ。
体調が悪いわけでもない。
ただ眠いだけなのだが、どうにもスッキリしない。
「まぁ、そう言う時もあるんじゃねぇの?気にすんなって。」
体を起こそうと手をついた私の背中を支えてくれる天元は少しも気にしていない様子で頭を撫でてくれた。
「でも、…あの、その…、し、し、シたく、ならない…?ごめんね、ずっと…デキなくて…!」
「は?!あー…いや、まぁ、溜まるっちゃァ溜まるけどよ。良いって、気にすんな。」
「え…?そ、そう…?なんか、ごめんね。」
やっぱり何か天元の様子に違和感を感じる。
正直、天元の"絶倫"具合は知り得ているし、三日くらいは平気で寝所から出してくれないことがあるほど。
それなのに此処何週間も致していないのにこんな風に優しくしてくれる天元に首を傾げる。
いや、もちろん天元は体調が悪ければ絶対に無理強いはしてこない。
だけど、体調が悪いわけでもなくただ眠いだけの私に対して我慢する必要はないように思える。
そこまで考えると少しばかり不安になった。
ここ最近、お風呂に入っているかのような幸せな生活で忘れていた負の感覚。
(…私に、飽きた、わけじゃない…よね?)
毎日飽きもせずに抱かれまくっていた日々が突然終わりを告げると考えるのは自分に対しての興味の低下。
私はずっと変わらずに天元を愛しているけど、こんな風にいつも寝てばかりの嫁なんて要らないと思い始めているのではないか。
それでなくとも私は一年ちょっとはずっと体調が安定しなくて天元におんぶにだっこ。
ずっと甲斐甲斐しく世話をしてくれた彼に感謝しかないが、そのせいで私に対して疲れてしまうのも無理はない。
(…どうしよう…、捨てられちゃったら…。)
久しぶりに碌でもない考えが後から後から浮かんできて私は不安に押しつぶされそうだった。