第43章 【番外編】ここに、いるよ。
「…んー……。眠ーい…。」
「寝るか?布団敷いてやろうか?」
「うーん…。いい、此処で寝ていい?」
「おいおい、風邪ひくぞ?さすがにまだ春先だ。いくら厚着してても体に障る。」
天元の言葉は尤もなのだが、どうも最近毎日眠い。
寝ても寝ても眠くて、結局毎日昼寝をしている。
こうやって眠いと言えばすぐに布団を敷いてくれる優しい旦那様がいてくれるものだから文字通り"食っちゃ寝"している。
流石にちょっと太ってきた気もしてきたので、今日は寝そうになる頭を振って、縁側からゆっくり降りた。
真雪ちゃんも寝ているのだろう。
ついさっきまで泣き声が聴こえてきていたが、今は静かになっている。
「ほの花?どうした?寝ねェの?」
「んー、やめとく…!久しぶりに体でも運動でもする。天元、鬼ごっこでもしよ!」
「ちょい待て。それは駄目だ。」
「…えー?何で?だってこのままだと寝ちゃうよ。目を覚ますには体を動かすのが一番だと思わない?」
もう体調は問題ないし、遊郭の戦いの時の負債はない。
たまに目眩が再発していたけど、毎日あるわけでもないし、今日は眠いだけ。
立ち上がっても少しもフラつかない体に自信満々に天元を見つめるが、私よりも眉間に皺を寄せて辛辣な顔をしている彼に首を傾げた。
「それは分かるけどよ、鬼ごっこって…。琥太郎と遊ぶんじゃねぇんだぞ?たまに目眩もあるんだから散歩くらいにしとけ。」
「散歩〜…?散歩でこの前歩きながら寝ちゃったの忘れたの?」
「………あれはお前が俺の腕に掴まってたからだろ?」
そう。私はつい最近、あまりに眠くて歩きながら寝入ってしまったのだ。
結局、天元が途中で私を抱き上げて帰ってきてくれたのは記憶に新しい。
だから散歩という選択肢は必ずしも眠気覚ましにはなり得ないということを分かっているのだ。
「…でも、散歩するなら天元と手繋ぎたい…。」
「おい、お前なぁ…。俺を昼間っから煽ってどうすんだよ。よし、そんなに運動してぇなら布団敷いてやるぜ?」
そうやってニヤリと笑う天元だけど、最近、私たちは情交をしていない。
夜でも昼でも眠たくて私がすぐに寝てしまうせいなのだが、天元からしたら溜まっている筈なのに無理矢理起こして抱かれることもないのでその優しさに甘えてしまっている。