第42章 【番外編】過去との決別
「次は孫を連れて帰ってこい。」
「うるせぇな。コイツが気にするようなこと抜かすんじゃねぇよ。」
「兄貴に愛想をつかしたら俺が可愛がってやらんこともない。」
「ふっざけんなっつーーーの!?誰にも渡すわけねぇだろ?!黙れ、口を削ぐぞ。」
ほの花の目が覚めて、二日後俺たちは漸くこの地から帰宅の途に着くことになった。
薬が効いたことでほの花を認めてくれた首領はまだ分かるが、天承の変わり身には驚かされる。
しかも、何故かほの花をやたらと口説こうとするような素振りを見せるところが垣間見えて気が気ではない。
「あはは…また伺います。長い間お世話になってしまい、申し訳ありませんでした。次は…頑張って子作りしてきます!!」
「お前もーー!?朝っぱらから女が言う台詞じゃねぇし、(いや!嬉しいけど)ちょっと黙ってろ?!」
ほの花もほの花でこのぽけーっとしている性格は相も変わらずなわけで、この場で俺一人がヤキモキしている状態を何とかして欲しい。
それなのに天承はズイッと一歩前に出るとほの花に向かい、またも平然と口説きにかかる。
「兄貴がうるせぇから今度は一人で来るといい。この辺りを案内してやろう。」
「あ、でも…私、此処まで一人で歩いてくる体力が…」
「心配ない。迎えに行こう。俺が抱えてやろう。」
「え?ん…え?!え、天承さん…?」
鈍感なほの花ですら分かりかけている状況に首領は我関せずだが、俺はそんな状況を許すわけがない。
「だーかーらー!コイツは俺のなの!お前には指一本触れさせるつもりはねぇ!嫁いるだろうが!お前だって!」
「三人目にしてやろうと思っている。」
「お前、馬鹿なのか?!何故上から目線なんだよ!俺の妻になんの!誰がやるかよ。こっちがコイツと結婚までこぎつけるのにどれだけ苦労したか分かってんのか?!」
「それは知らん。だが、そんなことを押し付けられても困る。」
「はぁあ?!押し付けてんじゃねぇ!事実を言っただけだろ!」
「あーちょっと落ち着いて!二人とも〜!」と情けない声でほの花が止めに入ってこなこれば俺たちは日が暮れるまで言い合いを続けていただろう。
だが、正直なところこんなに喧嘩をしているのは初めてのことだった。