第42章 【番外編】過去との決別
やばいやばいやばい…。
やめ時がわかんねぇ…!!
俺の警戒心の甘さから天承に痛めつけられちまったほの花に責任を感じていたところ、今まで気丈に振る舞っていたほの花が初めて泣き始めたことで無意識に体が動いた。
正直、何でこんなことした?と言われても説明できない。
本当に無意識に脳が勝手に体を動かしたと言っていい。
泣いてるほの花の手を引いて抱きしめてしまったのだ。
正直、女とヤることは最後までヤったことあるし、俺の中で"抱きしめる"なんて会話すると同じくらいの感覚…のはずなのだが、ドクンドクンと煩い心臓がこの行為の終わり方を分からなくさせている。
泣き止んだら終わり…のはず。
でも、離したくない気もするし、後ろから天承の気配は消えているが、ほの花は微動だにせずに動かない。
鼻を啜る音も聴こえてくるけど、涙はもう止まってるかもしれない。
それよりもほの花より俺の心臓のが遥かに煩いことも何だか悔しくて動けない原因だ。
コイツの旦那という"天元"はもっと上手くやるんだろうが、俺はそいつより餓鬼だし、経験値は低いんだから当たり前だ。
そんなことも分かっているのにいろんな感情が入り混じってこの行為の終わりどきを考えあぐねているのだ。
しかし、そんな俺の苦悩を感じ取ったのかおずおずと顔を上げたほの花が「あの…」と話しかけてきた。
急に顔を上げたほの花に慌てて離れるが、こんなに間近で顔を見たのは初めてだったのでまた胸が跳ねた。
(…何なんだよ、調子狂うぜ…)
背丈は確かに高いが、抱きしめた体はすごく細かった。
優しい花の香りが大人の女を感じさせて、妙な気分にさせられた。
「…あの、ありがとう。もう大丈夫。大人なのに泣き噦ってお恥ずかしい限りです…」
「いや、俺の弟が悪かったな。怖かったろ?」
「あ…えと、ううん!大丈夫。気が抜けて泣けてきただけ。ごめんね。」
そうやって笑うほの花はいつものほの花に見える。
だけど、どことなく元気がないようにも感じるのは泣いた後だからだろうか。
俺はその理由までは察することができず、どうにも悔しかった。