第42章 【番外編】過去との決別
「天承、とにかくそれを下ろせ。ほの花に武器を向けるな。コイツは間者じゃねぇ。」
「………信ずる証拠は。」
「ない。だが、直感的に分かる。コイツは違う。」
──ガキィンッ
天元くんは早々に会話を終わらせると天承くんが私に向けていたクナイを弾き飛ばして、私の前に座って首をマジマジと見てきた。
「…悪ぃな。俺の弟が。痛かっただろ?」
そう言って触れられた其処が暖かくて何だか急に鼻がツンとした。
怖かったわけじゃない。
そういうことじゃない。
触れられたその指の温度が天元と同じで、急に恋しくなってしまったんだ。
愛おしい彼のことが。
此処にいるのは間違いなく若い頃の天元なのにやっぱり私を愛してくれた彼じゃ無い。
同じところばかりで心が満たされていたように感じていたけど、やっぱり違う。
「…っ、ふ…、ぇ…」
一度込み上げてしまうとどうすることもできなくて堰き止めていた涙が溢れ出してきてしまった。
突然の私の号泣に目を見開いた天元くんとその後ろにいた天承くん。
こんな年下の子の前で情けないことこの上ない。
だけど、止められなかった。
天元に会いたかった。
抱きしめられたかった。
口付けて欲しかった。
「ほの花」と名前を呼んでほしい。
朝まで布団の中で肌を重ね合いたい。
「ご、め……!とま、んな…」
きっと天承くんに攻撃されたことが怖くて泣いてると思われているだろう。
こんな頃合いで泣いてしまえば、天承くんが気に病むかもしれない。
何とか涙を止めたくて何度も目を擦って止めようとする私に天元くんが手を掴んだ。
一体どうしたのやら…と彼を見上げようとするが、それより先に掴んだ手を引き寄せられて、次の瞬間には天元くんの胸に顔を埋めていた。
「え、へ、や、え?て、ててて、天元、くん?」
「うるせぇ。黙れ。泣き止むまで胸を貸してやる。旦那の代わりにはなれねぇけど…、勘弁な。」
「……。」
彼の体は今の天元より一回りくらい小さい。
だけどちゃんと筋肉があって私なんかとは比べようもないほど硬い体。
だけど、物凄く暖かかった。