第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
しかし、私はこれでも産屋敷様の専属薬師だった母の娘。
現在の彼の専属薬師なのだ。
鬼殺隊でもある私が産屋敷様の体を心配し、彼のために尽力することは当然のことといえる。
それは"柱"である宇髄さんなら分かってくれるのでは…?という気持ちも捨て去ることはできない。
とりあえず相談だけでもしてみる価値はあると思い、お風呂から上がると彼の部屋を訪ねてみることにした。
「宇髄さんー。ほの花です。」
「おー、入れ入れ。」
"失礼します"と入室すると、夜着を身につけた彼はやはり昼間のそれと違い、底知れぬ色気を醸し出しているので一度彼に捧げたと言うのに未だに見慣れない。
「どうした?つーか、お前ならそんな畏まらなくても普通に入ってこいよ。」
「え、あ、ありがとうございます。あの、ちょっと御相談がありまして…。」
「相談?」
襖のそばで正座をしていたのにその私の姿を見て柔らかく微笑んだ宇髄さんが手招きをしてくれる。
"おいでおいで"と言っていることが分かると少しだけ顔が熱くなった。言われた通り立ち上がりそばまで行くと今度は自分の膝を指差してニコニコと微笑んでいる。
「…え?と、…?」
「ほら、来いって。」
「へ、そ、そこに、ですか?」
「おお。ほの花専用なんだけどなぁ?」
そういうと私の手を引っ張るので、簡単に彼の腕の中に吸い込まれてしまう。
毎日一緒にいるのにこうやって彼の温もりを感じるのは随分と久しぶりに感じた。
「…はぁー。やっと触れた。枯渇するとこだったぜ。」
そう言う宇髄さんの言葉は最もで確かにそこはとても安心するところで、彼に抱き締められるだけで視界が色づいていくような感覚さえあった。
「…ふふ。宇髄さん、あったかいです。」
「ほの花もな。風呂上がりだもんな?良い匂いする。」
髪に鼻を寄せて思いっきり息を吸い込む彼が愛おしくて私も自ら胸に顔を寄せた。