第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
宇髄さんに見つからないように恐る恐る正宗たちに声をかけて自分の部屋に引き入れると先ほど考えていたことを話してみることにした。
「…あの、お早めにお願いしますね?」
「宇髄様にこんなところ見つかったらあらぬ疑いをかけられるんですよ?!」
「私なんてこの前なんてほの花様に声かけただけで睨まれましたけど。」
どうやら各々言い分があるようでこの状況ですら早く終わってくれと思っている。
どうにもこうにも話す前から断られる気しかしない。
「…あの、里にさ…薬につかう薬草を取りに帰りたいんだけど…正宗たちは…」
「「「行きません。」」」
「で、ですよねぇ…?」
最後まで聞くこともできずに、食い気味で拒否をされたが、いまの話の流れでは予測の範疇過ぎて何も言い返せなかった。
「勘違いなさらないでくださいね?行きたくないと言うわけではないです。できることなら付き添いたいです。曲がりなりにも元護衛ですから。」
正宗がそう補足をしてくれているのを二人も頷いて黙って聞いている。
「…しかし…、前回外泊すると言った時のあの形相覚えてます?あの時はお二人はそういうご関係でなかったんですよ?」
「お、覚えてる、覚えてます。」
そう彼が言っているのは宇髄さんのお誕生日事件のことだ。"奥様達との時間"を贈り物にしようと考えていたのに逆に怒らせてしまったことは記憶に新しい。
…ということはあの時から彼は私を想ってくれていてのだろうか?
それは…嬉しいけど、要するに今、外泊する旨を伝えても絶対に許してくれないだろうということが簡単に予測できる。
しかも三人を連れて行くとなると自分の恋仲となった女が他の男と外泊を含む旅行に出かけるということになるのだ。
「….や、やっぱ無理かぁ…。」
「…悪いこと言わないので直接宇髄様に聞いてみてくださいよ。我々には判断できかねます…。では…。」
そそくさと部屋を出てくる彼らを恨めしい目で見送るしかなかったが、彼らの言っていることは最もだ。
この家の決定権は紛れもなく宇髄さんだけなのだから。