第42章 【番外編】過去との決別
ほの花は本当に不思議な奴だと思う。
掴みどころの無い羽が生えてるみたいな奴。
だけど、地に足はついてるし、少女のような一面を見せる時もあるのにふとした時の大人の表情に胸が高鳴る時もある。
弟か妹がいるのかと聞かれて洞察力があるな、と思うところなのに何故か"確認作業"のようにも見えた。
ほの花は確かに現実的にあり得ないことが起こってここに来てしまった。
だから浮世離れしているような感覚がもたらされるのは仕方ないことなのかもしれないが、ふとした時の違和感はどうにも拭うことができずにいた。
「ほの花は妹にも姉にも見えねぇよ。」
「え?あ、ほんと?それなら良かった!」
それは本心だ。
妹でも姉でも無い。
では、一体どんな存在なのだ?と聞かれたら答えることはできない。
知人…?
友人…?
どれもしっくり来ないのだ。
でも、ゆっくりとそのことを考えるような余裕はなかった。
ほの花がすぐに話し出したからだ。
「ねぇ、天元くん。人生ってね…思い通りにならないこともたくさんあるんだぁ…。」
それも何だかいつもと比べたら重苦しい空気感を醸し出していて、その表情は哀しみが滲み出ていたから。
「…何だよ、年寄りの世間話かよ。」
「あははっ!いいよ、それでも。聞いてくれる?」
「…まぁ、いいけど。」
此処に飛ばされた時ですらこんな哀愁漂う表情はしていなかったのに、今のほの花は近寄り難い雰囲気すらある。
じっと見つめてくるほの花に目線を合わせるように向き合うとぽつりぽつりと話し出した。
「私ね、大切な人をたくさん亡くしたの。友達も同僚も上官も…。どうすることもできなかった。私は弱くて…全然役に立てなかったの。」
元いたところの話なのだろう。
ほの花の口振りから多くの人間が戦いで死んだことを想像させた。
先ほど言っていた甘味処に行っていた友達も含まれているのだろう。
哀しそうに伏せられた目は睫毛が長いことで影が出来ている。