第42章 【番外編】過去との決別
「許嫁が…四人いる。」
そう言えば大抵の奴らは四人も許嫁?と怪訝そうな顔をするに決まっている。
ほの花だって驚くはずだ。
そう思ったのに…
「あ、そうなんだ!!天元くんカッコいいし、優しいもん!きっとお嫁さんになる人凄く幸せだね。」
まさか、そんな風に言われるなんて思ってもいなかった。
ほの花は性格的に辛辣な物言いはしなさそうだけど、流石に許嫁四人は世間的におかしいことは自分とてわかっていたのだから。
「…驚かねぇの?」
「ん?…え?何が?許嫁がいること?」
「そっちじゃねぇ!!よ、四人もいること…」
「………あ、ああ!四人…、四人…た、確かに!た、たくさんいるね!」
………わざとらしい。
別に変な態度を取られるとは思っていなかったけど、驚かないのは流石に変だと思った。
まるで四人許嫁がいるのを知っていたかのような言い草。
「…何で驚かねぇの?」
「え、と…あの…」
明らかに動揺するほの花に訝しげな表情をしたのは自分。
怪しい奴ではない。
間者の線はないと…思う。
こんな間抜けな間者がいたら、いつ殺されてもおかしくない。
じっ…と見つめてしまったことで肩を竦ませたほの花は小さくなりながらこちらを見あげて口を開く。
「知り合いの人が…、三人奥様がいたから…あんまり驚かなかっただけ…なんだけど…。何か、まずかった…?」
「…知り合い、が…三人…?」
「うん…。」
ほの花の知ってる奴が三人の嫁がいたから四人でも三人でも変わらない…と言うことであまり驚かなかったということか?
それならば…、確かに納得はいく…が、何故かスッキリしなかった。
確かに話の内容は嘘ではないのだろう。
ほの花は嘘は苦手なように思うし、動揺した様子だったのは俺が訝しげに見てしまったからか?
そう考えると少しばかり申し訳なく思う。
「…へぇ。そう、か。四人なんて多いだろって言われると思ったから驚いたぜ。そういうことな。」
「…天元くんならきっと良い旦那さんになるよ。」
「どうだかねぇ。」
ほの花に良い旦那になると言われて嬉しいんだが悔しいんだが不思議な感覚になる。
その理由は分からない。
ただ許嫁の話を話したことを若干後悔した。