第42章 【番外編】過去との決別
「わぁ…!!」と言って花開くような笑顔に心が躍るのは出会った瞬間から変わらない。
ほの花が此処に来てから数日経ったけど、廃墟のような家に住まわせていることが気掛かりで毎日様子を見に行っていた。
正直、そんなことをするような女でないことくらい分かっている。
困ってる女を助けてやらないと気が済まないような優しい奴でもない。
ただ綺麗な顔をして、意外にも竹を割ったような性格。
野宿も厭わないというほの花が放っておけなかった。
戦えると自負していたが、今は体が弱いと言う。
首を傾げるようなことばかりだが、心臓の音はいつも規則正しい。
嘘はついていないだろう。
メシくらい何とでもなるとは言っていたけど、炊き立ての飯を食わせてやりたくて、お節介と思われることを覚悟で握り飯を持っていくとあの笑顔で喜んでくれた。
物凄く単純だとは思うが、それを見るともっとその笑顔が見たくて、取り憑かれるように足繁くほの花に会いに行った。
しかし、今日は少し遠くまで親父の命令で出かけていたため、帰りが遅くなってしまった。
陽が落ちかけた時、今日は握り飯を持って行ってやれないと言うことが会えないと言うことに安易に繋がることが嫌だと感じた。
何とか接点が欲しい。
何か用事が無ければ、ほの花に会いに行く理由にもならない。
俺は仕方なく、町に寄ると閉店間際の甘味屋に入って豆大福を3つ買った。
甘味が好きかどうかもわからない。
豆大福が食べられるかもわからない。
でも、苦手だとしたら妹にやればいい。
ただ…会う口実にしたかった。
そんな邪な気持ちを持ってほの花を訪れれば、またあの笑顔で迎えてくれて勝手に顔が緩んでしまった。
「嬉しい…!!天元くん、何で分かったの?!」
「…へ?な、何がだよ。」
しかし、ほの花は笑顔の中に疑問符があちこちに飛んでるようにも見受けられた。
俺にもその言葉の真意が理解できず、聞き返してしまった。
「あのね、私…豆大福が一番大好きなの!甘味の中で…!」
「え…?そ、そうなのか。そりゃ、よかった。」
あらゆる選択で結果は決まる。
俺はほの花に対してどんな選択をすれば喜んでくれるのか。そのことで始終頭がいっぱいだった。