第42章 【番外編】過去との決別
「……黙れ。」
「事実だろうが。自分だけ無かったことにしようだなんて虫が良すぎるだろ?」
「ンなことしてねぇよ。アイツらのことを忘れたことは一度もない。」
殺してしまった妹と弟の墓参りは欠かしたことがない。それが贖罪になるとも思っていないが、俺の中では欠かすことができない重要な事柄だ。
元嫁たちとずっとやってきたことを今はほの花も一緒にしてくれてる。
過去にしたことは取り戻せないが、それでも俺の出来うる限りのことをしてきたつもりだ。
「…宇髄家から抜けたとしてもお前は宇髄家の血を引いてる。弟妹を殺したのは修行の一環だ。何をそう…声を荒げて…。精神を鍛えるべきだ。」
弟妹を殺してしまったと愕然とする俺に父親である玄信も今の天承と同じことを言った。
──たかが弟妹が死んだくらいで狼狽えるな。精神の鍛え方がなってないぞ、天元。
忘れもしない。
あの時、俺は違和感を感じたんだ。
弟妹達とは天承と違い、割と友好的な関係を築いていた。
それなのに、死んで悲しむなという方が無理だ。
精神の鍛え方が足りないと言うのは間違いだ。
それだけどうでもいい存在だったということ。
コイツらが自分達のことを手駒の一つでしかないと考えていることが明白になった。
ほの花が死にかけて心臓が止まった時、俺は生きた心地がしなかった。
生きてる意味がないとすら感じた。
「…ああ、そうだよ。死んでも俺は宇髄という姓を名乗り続ける。それから逃れるつもりはない。でも、それは弟妹達の尊い犠牲の上に生き残った自分の責任だからだ。アイツらの無念を胸にこれからも生き続けると決めてるからだ。テメェと一緒にすんな。」
人が死ねば悲しく苦しい。
それは人間の当たり前の感情だ。
それを鍛えたことで感じられなくなるくらいならば精神なんて鍛えなくて構わない。
無惨戦で何人もの仲間を失った。
若くして犠牲になった者が何人いたか。
アイツらのことを未来で語ってやれるのは俺の責務だ。
それは鬼殺隊で共に戦った仲間も弟妹も同じこと。
アイツらが生きた証を俺がド派手に語り尽くす。それが俺の贖罪だ。