第42章 【番外編】過去との決別
少年天元くんは私の旦那様になる予定の天元と比べるとやはり表情のあどけなさは残る。
でも、発言は今の天元とほとんど変わらない。
既に大人びていて、達観している。
"そうならざるを得ない"環境だったのだ。
気になるのは今よりも目が……生気のない目をしていること。
今の天元のが生き生きとして子どもっぽさを兼ね備えているように思うほど。
そんな少年天元くんは私の状況を知って「ついて来い」と言ったきりかれこれ二十分近く歩いている。
正直、これは夢なのかもしれないと思っていた節もあったが、それは間違いだったと体が言っている。
(…し、しんど……。疲れた……。)
あの戦い以降、疲れやすい情けない体。
前を歩く彼について行くのが精一杯で、息も上がって来てしまった。
いつもは疲れたら天元が抱き上げてくれるから気にしたこともなかったけど、随分と体力も落ちているようだ。
きっと少年天元くんからしたら今の状況も物凄く気遣ってくれているのだろうけど、そろそろ足がもつれそうなので、声をかけてみることにした。
「……あ、あの…天元くん…」
「ん?ああ、あと少しだ。十五分くらい。」
十五分…だと?!
昔の私ならば走っていけば合わせて十五分足らずで到着出来ていただろう。だが、今の私には荷が重い。
申し訳ないと思いつつ、彼に休憩を申し出ることにした。
「あ、あのね…、凄く…言いにくいことなんだけど…、私…体が弱くて…。少し…休憩をとらせてもらうことできない、かな?」
ひょっとしたらこの後用事があるのかもしれない。私なんかのために時間を割いてくれていることに申し訳ないことこの上ない。
お伺いを立てるようにチラッと彼を見つめれば慌てたように立ち止まった。
「おいおい、そういうことは早く言えよ。大丈夫か?」
「ご、ごめんね。情けないし、恥ずかしいし…で、言い出しにくくて…。昔はそんなことなかったから余計に、ね。」
そうだ。
私は昔はそんなことなかった。だからこそ今の状況が情けないと感じてしまうのだ。
そんな私を見て少年天元くんは目の前に屈んでくれて、思ってもいなかった申し出をしてくれた。