第42章 【番外編】過去との決別
金がない…?
金が…ない?
は?家出娘??
俺は頭を全力で回転させるが、目の前にいる女のその言葉の意図はわからない。
いや、裏などないのか?見たところ若い女ではあるが、俺よりは年上なのだろう。
でも、年上なのにも関わらず、どことなく放っておけない様子のその女、ほの花とやら。
名前に聴き覚えもないのに、疑うことが憚られる独特な空気感を持つ。
「…財布でも落としたんかよ。」
「う…、い、いえ。天元…あ、えと…私の探してる方の天元が持ってて…。」
「あー…なるほどね。」
この女が探している『天元』が荷物を持っていたと言うことか。
要するに無一文で此処に迷い込んだということ。
そうなれば町に行ったとしても、宿すら取れないと言うことか。
「…待ち合わせとかしてなかったのか?」
「……あ、の…、…は、はい。」
「…?何だよ?」
何か言おうとしてやめた様子が見受けられたため問い返したが、目を彷徨わせて唇を震わせているだけ。
まぁ、俺がこの女をどんな奴なのか分からないと思っているようにコイツだって思っているのだろう。
些か気に入らないが、信用されるには時間を要することだ。
「…心配しなくても…あんたのことを殺すつもりはないし、その…信用してくれていい。」
「え?あ、…いや、て、天元くんのことは信用はしてるんだけど…、私の言うことを信じてもらえるか…不安ってだけ…なの。」
(……信じてもらえるか不安?)
益々よく分からない。
信じられないようなことを今から言うつもりだったと言うことか?
そこまで言われると逆に気になってしまうと言うものだ。
女にしては高い身長のほの花とやらを見つめると「話してみろよ」と言ってみた。
しかし、その瞬間、花の咲くような笑顔を向けてきたほの花にまたもや心臓が跳ねた。
(…何だ…?何なんだよ、コイツ…。調子狂うな…)
自分の身に起きてることの方が信じられないが、ほの花は意を決したように口を開くと、とんでもないことを言ってきた。
「…あ、あのね…、私…多分、違う世界から飛ばされてきたんだと思う…」
「……は?」
それは確かに"信じてもらえるか不安"だという言葉に相違ないだろう。