第42章 【番外編】過去との決別
── 俺も、天元って名前なんだけど。あんたの探してる天元って何歳くらいの奴?
その言葉に私が固まるのは仕方ないと思う。
だって…目の前の少年は確かに天元に似ていたから。
それならば確認しなければいけないことがある。
私は一つ息を吐くと目の前の少年に向き合った。
「…え、と…君も、天元って名前なの?」
「ああ。宇髄天元。で?あんたの探し人の『天元』の年齢は?」
──宇髄天元
それは私の探し人であり、想い人であり、旦那さんになる人でもある。
でも、目の前の彼は私よりも明らかに年齢が下に見える。
だけど、容姿は似通っている。
(……ということは…まさか…)
もう一度自分が立っている場所を確認するためぐるりと一周見渡してみると、どことなく忍びの里に向かう途中に通った山のような気がしないでもなかった。
(…私は…過去に遡って来たということ?死んだんじゃない…。そんな嘘みたいなことがある?)
一向に口を開かない私を不審に思ったのか目の前の"少年天元"が口を開く。
「なぁ、聞いてんの?」
「え…?あ、ああ!ごめんなさい!えと、年齢は二十四才だよ!君はいくつなの?」
「二十四か…。俺は十五だけど、この辺じゃ同じ名前でその年齢の"天元"は見かけねぇぜ?町の方に行った方がいいんじゃねぇの?」
「え?!十五…?!お、大人っぽいね…。」
十五にしては既に色気を漂わせる"少年天元"。
こりゃ、女性から引くて数多なのは肯ける。
二十一の私から見ても十分恋愛対象になり得る容姿の大人っぽさに目尻を下げた。
だが、そう言うことならば私の正体を知られるわけにはいかない。過去に来てしまったと言うことは少しでも過去を変えてしまえば私たちは出会わなくなってしまうかもしれない。
急に此処に来たのだから、急に帰れる可能性だってある。
早く帰らないと天元が心配する。
「どーも。町の方角分かるか?」
「あ、お、教えて…欲しいけど…。」
「けど…?」
どうしよう。
十五の彼にこんなこと言うべきではないかもしれない。
でも、このまま町に行ったところで私は野垂れ死ぬのは目に見えている。
下手したら遊郭で働かないといけないかも…。
「……お金が…ないの。貸してください…。」
「……は?!」
何という情けない二十一歳。
私は恥ずかしくて肩を竦ませた。