第42章 【番外編】過去との決別
「あ、え、えと…!こ、こんにちは。」
『あんた誰?』と聞かれていたのにうっかり惚けていた私は呑気に挨拶なんてしてしまった。
目の前にいた少年は訝しげにこちらを見つめるが、その瞳は天承さんのような冷たさは感じなかった。
虚無感はあるが、その瞳はどことなく温かさを感じた。
「……ハァ…、名前、聞いてんだけど。何処から来た?俺、ずっと其処の木の上にいたのに突然あんたが現れた。何者だ。」
その子の言葉に私は目を見開いた。
やはり私は死んでしまったのだろう。
突然此処に現れたなんてそんな摩訶不思議なこと現実に起こるはずがないのだから。
「あ、えと…ほの花です。神楽ほの花。どうやら私、死んじゃったんですね?此処は天国ですか?地獄ですか?でも、腕も頭も痛くて…お腹も空いてるんです。困った死人ですよね…。」
「………はぁ?何言ってんの、あんた。」
明らかに頭のおかしい人間を見るような目つきに変わった彼に益々首を傾げる。
其処まで変なことは言ってないはずだが、如何せん情報が少なすぎて判断することもできないのだ。
「此処は天国でも地獄でもない。忍の里だ。あんた、生きてんじゃねぇかよ。」
「……へ?!えええ?!」
「足も生えてるし…」
その子はそう言いながら私の足を見た後、徐に手を私の頬に持っていくとそのまま思いっきり抓った。
「いててててててて!!」
「ほらな、触れるしよ。死んでねぇよ。」
「……え、じゃあ…天元はどこ?!」
「……は、はぁ?」
「ねぇ、君…物凄く大きくて筋肉盛り盛りでめちゃくちゃ美丈夫な男の人見なかった?!」
私が死んでいないのであれば、何故こんなところに来てしまったのだ。
天承さんもいないし、お父様もいない。
そもそも家の中だったのに何故外に?!
キョロキョロと森を見渡してみても屋敷らしきものは見当たらない。
目の前にいる少年は身長は私と変わらないくらいだけど、綺麗な顔をしている。
やはり天元によく似ているようにも思う。
そんな彼の肩を掴み懇願するように聞いてみれば、大きくため息を吐いてから紡がれた言葉に私は目を見開いた。
「…俺も、天元って名前なんだけど。あんたの探してる天元って何歳くらいの奴?」