第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
初めての一夜から数日後、漸く日常に戻り朝から鍛錬をしているが、宇髄さんがそれを見ながらため息を吐いている。
一体どうしたと言うのだろうか。
こちらを見て恨めしそうにしていられるとどうにも居心地が悪い。
キリのいいところまでやると思い切って聞いてみることにした。
「…あの、どうかしました?」
「んー?」
「何か悩んでます?」
「….悩みっちゃぁ悩みだな。」
珍しいこともあるものだ。
彼は溌剌とした前向きな性格の持ち主だと思っていたが、思い悩むこともあるのだと。
恋仲になったとは言え、継子なのには変わりない。師匠の悩みを聞いてみたいと思い、彼に向かって意気揚々と提案をした。
「私で良ければ聞きますよー?」
「んー…悩みっつーかよ。俺さ…。」
「はい!何ですか?」
「もうお前のこと継子に見えねぇ。」
「………え?」
それは…どう言うことなのだろうか。
突然、破門を言い渡されたと考えるのが妥当なのか?しかし、私は彼にそんな失礼を働いただろうか。
まさか初夜の日に失礼なことを…?!
だんだん血の気がひいていくのが分かると、私の顔色を見て彼がギョッとして"いや、違う!"と否定してきた。
益々分からない。
一体何が悪かったのだろうか。
「…そういう悪い意味じゃねぇよ。鍛錬見ててもお前のこと女としか見れねぇんだ。」
「え、…は、はい?」
「滴る汗見たらあの夜のこと思い出しちまうし、お前のこと見るだけで裸を想像しちまう。厳しくなんてできねぇよ。なぁ、どうしたらいい?」
「…ど、どうしたら…いいのでしょう?」
そんなこと聞かれても分からないし、恥ずかしいことを言われているのは分かっているが女として見てくれるのは嬉しいとすら思ってしまうので何とも難しい質問だ。
「…私、しのぶさんのとこに鍛錬に行った方がいいですか?」
苦し紛れにそう提案してみるが、今度は"離れるのが嫌だ"と言われて振り出しに戻ってしまった。