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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第42章 【番外編】過去との決別






「不満…そうだね…?」


「すっげえええええ不満。見りゃ分かるだろ?お前、帰ったら一週間布団から出さねぇからな。」


天元のお怒りはひしひしと伝わってくる。
彼は兎に角早く帰りたがっていた。もちろんそれを知ってはいたけど、自分の我儘で押し通してしまったので、言い返すことはできない。


「わ、わかったよぉ…。ごめんって…その…体は大丈夫?」


「大丈夫に決まってんだろ?!ンなことよりどうするつもりだ、テメェ!まさかこんなところにアイツの病が治るまで見届ける気か?!」


「ご、ごめんなさい…!えと、多分服用数回で効果は出ると思うから二、三日経てば分かってくれると、思う…」



とりあえず昔使っていたという天元の部屋に連れてこられたのはいいが、「許可なく此処から出るな」という天承さんのお達しがあるため軟禁状態だ。

予想外の状況に天元が腹を立てるのは仕方ない。
この状況に少しだけ嬉しいと感じているのはこの屋敷の中で私ただ一人だろう。


チラッと見渡すと昔の天元の面影が見え隠れする。過去の彼を知らない私からするとそれを見られるだけで嬉しくて顔を綻ばせてしまうのだ。



「…何ニヤニヤしてんだ、お前…。俺は怒ってんだけど?此処でぶち込まれたいのか?あん?」


「え?!あ、い、いや…!それは…えと…良いんだけど…」


「…良いのかよ。」



気もそぞろな私を見て訝しげな表情で私を見る天元に曖昧な笑顔を向けるしかできない。
天元にとってみれば此処は因縁の地。
でも、私にとってみたら幼き彼に触れられる唯一の場所。


「そ、それはもちろん!でも…こんなとこでシてたの見つかったら…」


「はぁ…わぁーってるっつーの。」



どかっと座り込むと深いため息と共に肩を落とす天元の隣に寄り添うように座る。
怒ってる筈なのに優しく肩を抱いてくれる彼に怒りに飲み込まれない心の強さを感じた。



「…此処で…育ったんだねぇ…」


部屋の中をぐるりと見渡して無意識に出た言葉は私の本音。
過去に囚われる必要なんてない。でも、天元のことをちゃんと理解したいし、知っていたかった。


そんな私の本音に納得したように頷くと一言だけ「まぁな」と言ってくれる。
多くは語らない。
思い出したくないことなのだろう。

それでも良い。
ただ同じ空気を吸ってみたかった。

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