第42章 【番外編】過去との決別
大きなため息を吐くと目の前にいるほの花の肩を引き寄せて腕の中に閉じ込める。
これ以上は何もさせられない。
十分すぎるほどやってくれた。
目の前の二人とは相容れないだけのこと。
「…ほの花にそれを飲ませるのはやめてくれ。体が弱いんだ。薬は使い方によっては毒になる。それならば俺が飲む。それでいいか。」
「て、天元…!それなら私が飲むよ…!」
「…体が…弱い、だと?」
天承の目が吊り上がり、ほの花に冷たい視線をぶつける。
(…やっぱり其処か…)
最初からわかっていた。
ほの花の現在の体の弱さを伝えてしまえば、拗れることくらい。
認めてくれないことくらい。
「…あの三人との婚姻を解消してまでその女を娶る意味は何だ。ただ顔の良さだけで選んだか。それとも薬師としての能力か。」
「意味?意味なんて考えたこともねぇぜ。コイツを愛してる。それだけだ。」
「体が弱けりゃ多くの子孫を残せられない。それならばあと二人くらい他の女を娶れ。虚弱な女など宇髄家に相応しくない。」
女は子を産めば産むだけ価値がある。
それが宇髄家の考え方。
ほの花は確かに今の体の状態だと妊娠出産は難しい。
だが、一生できないわけではない。
少しずつ体力も出て来てるし、発熱する回数も減って来ている。
そんなことだけで嫁として認めないと言われるのが嫌だった。
ほの花でなければ意味がない俺にとってそんなことは取るに取らないこと。
しかし、どうせそんなことを言っても理解されないと分かっていた。
だからこそ言いたくなかったし、会いたくなかった。
ほの花を傷つけることになるから。
「…あ、あの…今だけ…少し…体調悪いだけなので…。」
「…ならばその役に立たない女の代わりにお前が飲め。毒でないか証明してみろ。」
ほの花の言葉を無視して俺に薬を飲めと指示して来た天承に大きな溜息を吐く。
言いたいことはたくさんある。
俺の女を役に立たないと言ったことも。
無視したことも。
毒入りの薬を処方すると疑ったことも。
全部腑が煮え繰り返りそうな案件だが、我慢してやる。
今はほの花が処方したそれの安全性を立証する。それが回り回ってほの花のためだからだ。