第42章 【番外編】過去との決別
流石は忍と言うのか…気を失いそうになりながらもこちらを睨みつけることを忘れない。
しかし、体は言うことを聞かないようで布団に横たえるところまでは天元が手伝ってくれたので助かった。
ただし、手早くやらないと最悪殺されることになるだろう。
手にはクナイが握られたままでいつでも私を狙えるのだと言う強い意志を感じる。
そんな天元のお父様の体をゆっくり一つ一つ確認していく。
手足はやはり浮腫んでいるようなので、やはり心臓の病を疑うのが妥当だろう。
「…呼吸が苦しいですか?」
「………。」
「えと…、あ、じゃあ、浮腫が出始めたのはいつくらいからですか?」
「………。」
「チッ」と言う舌打ちが聞こえてきたのは私の背後。要するに天元だ。
(…ヤバい、このままだと問診よりも先に天元がキレちゃう…)
私はそこまで気にしてないのだが、明らかに不機嫌な天元の様子に私は身震いをした。
まぁ…肩で息をしているのだから呼吸は苦しいのだろう。
いつから始まったとしても浮腫があるのは見てわかる。
「では…夜間頻尿になりましたか?」
「この……はしたない女め!!なんて言葉を口に出すのだ!!こんな品のない女を嫁にするとはお前は頭がどうかしているぞ!天元!」
「はぁ?!ふざけんなっつーの!!いくら父親だって言ってもよ。俺の女を侮辱するなら今すぐぶち殺すぞ?!」
「ああ、そうしろ!!こんな品のない女が薬師だと?!馬鹿にするのも大概にしろ!!!」
私の前と後。
要するに私は間に挟まれながらこの口喧嘩を聞く羽目になっている。
天元のお父様は見かけよりお元気のようなので恐らく病も末期の段階ではないだろう。
何を言ってもとにかく私のことは気に入らないのだ。天元がいくら庇ってくれても火に油を注ぐようなもの。
無意味だ。
私は大きくため息を吐くと、二人の言い争いが落ち着く頃合いを見て再び話し始めた。
「夜間頻尿の有無を聞いたのは夜中は横になる関係で腎臓の血流が増加します。そのため尿が溜まるのが早いのです。心臓の病の初期症状なのでお聞きしました。」
「つらつらと尤もらしいことを言う口の減らない女だな…。」