第42章 【番外編】過去との決別
もちろんいつかは子を持ちたいという想いはある。
それはほの花もそう言ってくれてるが、俺的にはほの花の負担になるようなことならばもうどちらでも良いとすら思っている。
生死を彷徨って生還したほの花。
もうあんな想いをするのは御免被る。
少しでも長く、一緒に過ごしたい。
子が欲しいなど二の次だ。ほの花の体のが優先事項。
"俺は"そう思っている。
だが、宇髄家としては長兄である俺の嫁として三人も充てがわれたのはそれだけ子孫を残すことへの責務があったからだ。
出産は命懸けと言う。
今のまま体調が全回復しない場合、ほの花が出産で命を落とすのではないかと気が気でない。
しかも、其れを万が一にでもほの花に言うようなことがあれば、アイツのことだから気に病むに決まってる。
宇髄家のために…俺のために…と子が欲しいと躍起になるかもしれない。
何度でも言う。
"俺は"ほの花の体が優先だ。
だが、アイツらに会わせたことでほの花に必要ない"嫁の責務"とやらを植え付けるのだけはやめて欲しかった。
だから俺はどうしても会わせたくなかった。
ほの花が言って来なければ絶対に連れて行くつもりはなかった。
それでなくとも、忍の里のことは話題を避けてきたと言うのに…
「本当に休まなくていいか?俺は別に構わないぜ?」
「…うーん…、あ、じゃあ茶店があったら寄っていい?お団子食べよ〜!糖分補給!」
「はぁ?さっきお前、羊羹食ってたろうが。」
「別腹別腹!ね、そうしよー!」
鬼殺隊の任務の時でさえ、懐にいつも忍ばせていた甘味を取り出して隣で意気揚々と食っていたのはつい今し方のこと。
俺がこんなにも考えを巡らせていると言うのにほの花はどこ吹く風だ。
口数は少ないが、口を開けばまるで小旅行に来ているかのような振る舞いに頭を抱える。
(…分かってんのかなー、こいつ…。いや、分かってねぇか。ほの花だもんな…)
能天気なほの花に半ば呆れていたが、俺は自分の選んだ女を見縊っていたことに数時間後に気付かされることとなった。