第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
鏡に映る自分の姿に驚くことなどはじめての経験だ。
首筋から胸元にかけて紅黒い痕がそこかしこに付いていて、最早病を疑うほど。
「…え、え…?え、と、こ、これは?」
「あー…だから、俺の…縄張り?」
「縄張りとは…ど、どういう…?」
「……明日までに消えなかったら雛鶴達に隠してもらえ。(多分無理だろうけど)」
…と言うことはこれはこんなに付いていてはいけないものということになる。
隠してもらえと言うことは隠さないと恥ずかしい物ということ…?
だけどあまりに申し訳なさそうに謝る宇髄さんに何にも言い返すことが出来なかった。
そのまま怪しまれるといけないからと私の部屋に布団を敷き直してくれてそこに寝かせてくれたけど、この"縄張りの証"をあとで雛鶴さんたちの中の誰かに見せるならば同じことなのでは…?と思ってしまった。
敷いてくれた布団はもちろん先ほどまで二人で寝ていたものとは違い、冷んやりとしていて熱を簡単に奪っていくのでギリギリまで宇髄さんが抱きしめて温めてくれた。
そんなことをしてくれるものだから当然文句など言えるわけがないし、昨夜生娘を卒業したばかりの私にこれ以上の知識はないので彼の言う通り具合の悪いフリをするしかない。
しかし、私の神経は図太いようで病人のふりをするだけでいいと言うのに布団を温めると言う名目で抱きしめられていたのにそのままウトウトと二度寝をしてしまった。
目が覚めるとそこに宇髄さんの姿はなく、代わりに雛鶴さん達が勢揃いしていて驚いて起き上がった。
「うわぁ、っ!お、おはようございます…!す、すみません…、」
物凄く軽やかに起き上がってしまったが、私は病人のフリをするのではなかったのか?
しまった…と思うが時すでに遅し。
私を見て、まきをさんが呆れたようにため息をついた。