第9章 『実家に帰らせて頂きます』※
しかしながら、昨夜は最後の記憶が全くない。
宇髄さんに抱きついたまま、何だか気持ち良くなってきたかも…と思ったのが最後。
気付いたら朝で彼に抱きしめられて寝ていたことになる。
というか彼はちゃんと満足出来たのだろうか?
恥ずかしいと言ってる場合ではなく、ちゃんと聞いて謝らなければ…。
「…あの、でも…昨日途中から覚えていなくて…ごめんなさい。宇髄さん、ちゃんと…その…。」
「あー、悪ぃ。意識ないのは気付いてたけど最後までしちまった。ごめんな。」
「え!いや、そんな!私の方こそ…起きていられなくてごめんなさい…。」
でも、そっか…。
宇髄さんがちゃんと満足出来たなら良かった。
ホッとして胸を撫で下ろしていると彼の指が私の顎を掬い上げて上を向かされる。
それとほぼ同時に宇髄さんの柔らかい唇が降ってきて、優しい口づけをされた。
それだけで昨日の濃厚な口づけを思い出し、じんっと下半身が熱くなってしまうので考えないように必死だ。
「…まぁ、起きていて欲しいって気持ちもあるけど、どっちでもいいわ。」
「…え?」
「ほの花をまた抱けるって考えただけですげぇ幸せ感じてんの。だからどっちでもいいわ。お前がここにいるなら。」
どんな殺し文句なのだろうか。
それを上回るような言葉が急に思いつくわけもなく、私は目の前の美しい筋肉に顔を寄せて抱きつくことで自分の気持ちが伝われ…と死ぬほど願った。
でも、折角抱きついたのに宇髄さんに勢いよく剥がされると神妙な顔をして頭を下げられた。
一体何事なのだ。
つい今の甘い空気はどこへやら。
「お前に謝らねぇといけないことを思い出した…。」
「……へ?」
「ちょっとな…つけ過ぎた。」
「…え?えと、何をですか?」
「まぁ、何つーか俺の縄張りっつー証を。」
縄張り??
言っていることがわからずにキョトンとしている私に宇髄さんは散らばっていた夜着を身につけると、私にも着せてくれた。
「お前の部屋に鏡台あったよな?」
「ありますけど…。」
「よし。先に言うぞ。ごめん。」
何のことを言っているのか分からないまま、この数分後私は目を見開いて固まる羽目になった。