第42章 【番外編】過去との決別
俺だって普通の家であれば、自分の女をド派手に家族に自慢したいに決まっている。
父親と次弟はソリが合わなかったが、他の弟妹には紹介したかった。
ほの花は誰とでもすぐに仲良くなれる奴だし、義姉として慕われることだろう。
宇髄家の嫁になると言うことは普通の慣例であれば、俺の実家に挨拶に来るのは当然のこと。
ほの花だって俺と結婚するとなるまでは思い描いていたことだと思う。
俺がほの花の実家に先に行ってしまったから余計にそう感じてしまったのかもしれないが、最初から俺は実家に来させるつもりがなかったから仕方ない。
「…大丈夫だよ。天元が嫌ならやめる。天元の嫌なことしたくない。」
「…ほの花…」
叶えてやりたい。
好きな女の願いの一つや二つ。
勘当されたわけでもない。
ただ一方的に俺が抜けてきただけの話だが、のこのこと帰って、親の決めた嫁たちと関係を解消して別の女を連れてきたとなれば矛先はほの花に向く気もする。
それがどうしても嫌なのだ。
気がかりなのはそれだけではないが、とりあえず現在の里の状況が分からないのだから簡単に答えを出すことはできない。
「…虹丸に偵察に行かせる。それで良さそうなら行くって言うのはどうだ。」
「…え?!い、いいの?」
「その代わり、日帰りだ。俺の父親と生きてる弟はお前の家族とは違う。家族になろうと思わない方がいい。」
俺はありがたいことにほの花の両親と兄君たちに認めてもらえたと思う。
この際、兄君たちのことは置いとこう。
それを抜きにしても神楽家の義理の息子として家族の一員となれたように感じるし、暖かい雰囲気で家族団欒を味わうことができた。
同じように考えているならば、それは全く違う。
俺の家族はほの花の家族とは違う。
だからこそ、俺はほの花に惹かれたんだ。
自分にないモノを持っていて、欲しかった暖かさが其処にあったから。
辛辣な忠告をしているのにも関わらず、目の前にいるほの花は尚も嬉しそうに笑うので、胸のモヤモヤがとれることはなかった。