第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
飲み過ぎてはいた。
確かにいつもより酒の量は多かった。
だからこそいつもより遅漏になっていたのは否めないし、ほの花に無理をさせたのも分かってる。
酒が回った状態で射精したらどうなるかと言うことも分かっていた
…つもりだった。
「……ん?」
意識が浮上したのは僅かな隙間から差し込む陽の光が自分の顔に当たったから。
酒が入っているとは言え、嫁の実家で熟睡できる神経の図太さには顔を引き攣らせるしかない。
しかも、いつ射精したのかも覚えていないが、隣でスヤスヤと気持ちよさそうに寝てるほの花を見ると無意識に顔が緩む。
(…かーわい…)
寝てても起きてても可愛いなんて思う自分は本当に骨抜きにされたと言って良い。
体を起こして着物を身につけようと思った時、遠くの方から不穏な足音が聴こえてきた気がした。
トントントントン…
床板を軽快に歩くこの足音は聴き覚えがある。
いつ聴いたのか?
(……や、っべぇ…!)
俺は慌ててほの花の布団をチラッと開けてみると案の定、彼女も素っ裸。
そして自分も素っ裸。
慌てて自分だけでも手早くそれを身につけて出迎えなければと片方の腕を通した瞬間、その襖は開かれた。
「いつまで寝てんだ!!飯の時間………だ…」
開かれた其処にいたのは目を見開いて部屋の惨状を目の当たりにしたほの花の兄君。
「お、お兄様♡おはようございます〜!!あ、あはは…!僕〜、寝過ごしましたねぇ!すみません〜!あはは!」
ダラダラと冷や汗が流れるのを止めることもできない。最早この状況は最悪だ。
控えめに言って修羅場だと言って良い。
「……天元。」
「………は、ハイ…」
「お前のことは許したが………婚前交渉まで許した覚えはねぇええええええええええ!!!!」
その大きな声でビクッと起き上がったほの花だけど、この状況を見て何も言えずに固まった。
「今すぐ着物を着ろ!!」と言われて慌てて着替えた俺とほの花はその日は午後には発つ予定だったが、結局昼過ぎまで泰君さんの説教を聞くこととなって、泊まらせてもらうことになった。
もちろんその日、俺とほの花の寝室は分けられて泰君さんと寝る羽目になったのは言うまでもない。