第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
深い口づけをして、香ってくるのはいつもの天元の匂いとお酒の匂い。
天元は晩酌は嗜む程度にするが、毎日というわけでもないし、正宗達と気が向いた時に飲んでいる感じだ。
ただし、お酒は強い。
いつだって意識はしっかりあって酩酊していることなんてない。
今日ですら熱い体に反して、私を見下ろす瞳はギンギンに見開いていたし、今だって首筋に這う舌はいつもの動きと大差ない。
いつもより少しだけ温度が高いことで、舌の動きはより鮮明にわかる。
ザラザラとした舌が首筋をツー…と舐め、皮膚を甘噛みされる。
痕をつけないでほしい理由はみんなに見つかると面倒だからということだけ。
それがなければ私は彼の愛を全身全霊で受け止めて、所有印をつけないで欲しいなんていう想いはなかっただろう。
「…ん…っ!」
チクッと鈍い痛みが首筋にいくつも残されると胸元まで降りてきた舌が鎖骨を舐め始めた。
臀部を弄っていた筈の手はいつの間にか帯にあって、器用に片手で外している。
シュル…と帯が外されると胸下の圧迫感から解放されて、幾分呼吸がしやすくなったように感じた。
着物の合わせ目に手をかけられると肌を露出されることへの抵抗感から咄嗟に胸元を覆った。
「…何だよ。今更"やめて"は無しだぜ?」
「わ、わかってる、よ!と、咄嗟に…。条件反射というか…」
何回、彼とまぐわっても慣れない瞬間は何度となくある。
素肌を晒す瞬間もその一つで不満げに見下ろす天元を見ると気まずいことこの上ない。
「見せろよ。俺もうこんなんなんだけど…?」
"責任を取れよ"と目で訴えかけてくる天元に浅い呼吸を繰り返す。
「…わ、かってる…!」
穴が開くのではないかと思うほど見られながら胸元に置いてあった手を取り払うと、今度は目を合わせられなくて天井を見上げた。
その隙に、と天元が着物を取り払うと露出した肌が空気に晒されて少しだけ身震いをした。
先ほど、外で見た時はあんなにも月明かりが美しくて清廉さを醸し出していたのに、襖の隙間から入ってくる光は天元の髪に当たってキラキラと妖しく光っていて、妖艶さに目を奪われた。