第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
そんな反応が可愛くてついつい見たいと思ってしまうのは俺の悪い癖だ。
しかし、次の瞬間、持っていた水と薬を口に含むと俺の首を強引に引き寄せて、唇に己のを押し当てて来た。
(……は?!)
あまりに突然のこと。
そして意外すぎる行動に俺は口腔内に入ってくる苦い水をひたすら嚥下することしかできない。
口移しとは言え、簡単に言えば接吻。口づけだ。
ほの花から口付けられて嬉しくないなんてことはなく、むしろ口の中は苦味でいっぱいなのに最後の一滴まで全て飲み干したいと途中からその行為の主旨は思い切り変わって来ていた。
一生懸命に首を引き寄せて飲ませてくれているほの花はよく見れば、やはり顔は真っ赤で少しだけ手が震えていた。
それが恥ずかしさからくるものだということはすぐに分かる。
シてやられたと思ったのは数秒だけ。
今は残りの水分が尽きるのを待つのみだった。
俺はほの花が全ての水を俺に飲ませたのを確認すると、すかさず彼女の口内に舌を差し込み、残った薬を掻き出すように舐め回した。
「…んっ!ふ、ぅっ!」
まさかこんなことをされると思っていなかったのだろう。
突然、入って来た舌に狼狽えて俺の胸をトントンと叩いてくるが、そんなことは無意味だ。
粒状性のその薬は錠剤と違い、一度で飲むのは至難の業。
自分で飲んでいたとしても口内にそれが張り付いてしまうのはよくあることだ。
薬を飲ませたかったのはほの花の方だ。
苦いのを我慢して、口内に残ったそれを舐め回して嚥下してやっているわけだから利害は一致しているはず。
それでも薄っすらと開かれたほの花の瞳がとろんとして色を持ち出したことでその行為は熱を帯びた。
彼女の体を持ち上げると既に敷かれていた布団の上に組み敷くと俺の好きな花の匂いがふわりと香る。
ゆっくりと唇を離すと、今度は首筋に口づけを落とす。
それが何を意味するのはほの花も分かっている。
「っ、て、天元…!だ、だめだって…!」
「誘ったのは…ほの花だよなぁ?」
「…さ、誘ってな、い!!」
「嘘つけ。」
普段、自分から口付けすらしてこないほの花。
口移しで薬を飲ませろと言ったのは俺でも、それをする理由は一つしか考えられない。