第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
昨日の敵は今日の友ではないが、酒が入ると面白いように兄君達と仲良くなれた気がする。
元々ほの花は一人娘。
婿仲間はいないのは分かっていたし、出来ることならば兄君達と仲良くしたいという希望はあった。
だが、ここに来たとき薄っすら難しいかもしれないという予想が出来ていたので、今の状況は嬉しい誤算と言える。
結局、泰君さんはとっておきの酒とやらをあるだけ全部出してくれて、ベロベロになった彼らをよそに俺と宗一郎さんだけは涼しい顔をしていて、そのままお開きとなった。
「天元、大丈夫?飲み過ぎじゃない?」
「んー?まぁ、流石に今日は飲んだよなぁ〜。でも、こんな風に飲む酒はうめぇからよ。たまにのことだ。許してくれよ。」
ほの花の肩を組んで離れの部屋に戻って来たけど、絡んでると言うよりは完全に千鳥足の俺を支えてくれているというのが正しい表現だ。
薬師であるほの花がそんな俺を見て呆れたように鞄から何か薬を取り出している。
「おーい…まさか折角美味い酒の後に、何か飲ませようとしてねぇ?」
「してるよ。だって飲まないと明日二日酔いだよ?はい。これお水ね。」
差し出されたそれは見るからに逃そうな深緑色の薬。
普段、飲み過ぎるなんてことはないのでそんな薬を飲むのは初めてのことだが、ほの花の薬はよく効くが、クソほど不味い。
その味が簡単に想像できる俺はほの花を抱き寄せて頭を撫でる。
「ほの花ちゃーん?俺は大丈夫だからよ?物騒なもん仕舞ってくれよ。な?」
「だーめ!私を絆そうと思ってもそうはいかないよ。飲むまで付き纏うからね。」
下からクソ可愛い顔をして見上げるほの花に目尻が下がってしまうのは惚れた弱み。
それだけで飲んでもいいかな、なんて思ったなんて若干悔しい。
酔っ払ってるのは間違いないけど、ほの花に意地悪をするだけの余裕はある。
「あ…!じゃあよ?それなら口移しで飲ませてくれよ?それなら飲んでもいいぜ?どうだ?」
ほの花が超が付くほど恥ずかしがり屋なのは知っている。
だからそんな頼み事は顔を真っ赤にして断ってくると思い込んでいた。