第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
二人を見比べてみても、その様子は最初の頃より幾分雰囲気が和やかなものとなっているような気がしたけど、確信はない。
二の句が告げずにその場に立ち尽くしていると口を開いたのはお兄様だった。
「…悪かったって。そんな顔で見るなよ。天元のことはもういい。認めるよ。」
「え…!?ほ、本当?!」
「ああ。お前、鈍臭くて世間知らずなんだから天元を困らせんなよ。」
「……え、あ、う、うん。」
ふと天元をみると、いつもの優しい顔のまま頷いて頭を撫でてくれた。
天元のことを認めてくれたの嬉しいけど、二人の間に何があったのか不思議で首を傾げてしまった。
「そーゆーことだから。まぁ、ほの花ももう心配すんな。お義兄様♡飲み直しましょう。」
「お義兄様言うな!気色悪いな!名前で呼べ!名前で!」
「俺、長兄だったから兄って呼ぶ人いなかったんで呼んでみたかったんですよね。」
「うるせぇな。…だけど、仕方ねぇからとっておきの美味い酒を持ってきてやる。結婚祝いだ。」
天元は人の懐に入るのがすごく上手い。
だから天元を慕う人は多かったし、柱の中でも苦手な人はいなかったように思う。
あの気難しい泰君兄様ですら彼に気を許しているのを見ると先ほどまで気に病んでいたことが取り越し苦労だったことは一目瞭然。
「わたしも…飲もうかな…?」
「「お前はやめとけ。」」
「……けちー。」
一見すると天元とお兄様は合わなさそうではあるけど、こうやって見るとお互い長兄だったから通ずるものがあるのかもしれない。
一度、心を開いてしまえば仲良くお酒を酌み交わす仲になれるのだろう。
「おい、天元。コイツは酒癖悪いから飲ませんなよ。」
「既に経験済みです。飲ませないのでご安心を…」
「なっ…!ひ、酷い…!二人して!」
確かにお酒は強くない。
母も全然強くないから似てしまったのだろう。
でも、せっかく二人の仲が良くなって、さらにお祝いの席なのだから少しくらい無礼講でもいいではないかと思ったのに…
肝心な二人に結託を組まれて拒否されるとは思わず、私は一人口を尖らせた。