第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
鬼殺隊 元音柱 宇髄天元
それがその男の名前。
ほの花が連れてきた男は鬼殺隊の精鋭とも言える柱だったらしい。
一目見れば、その男の実力はすぐに分かる。
まともにやり合えば、死闘になるだろう。
恵まれた体格に女に困っていなさそうな容姿を携えて、ほの花の腰に手を回していた時、腑が煮え繰り返りそうだった。
誰の妹に触れている?
誰の許可を得て触れているのだ。
生まれた時からずっとずっと俺達が守ってきた大切な妹。
鬼に襲われないように。
女児が産まれたことを悟られないように。
変な男に騙されないように。
『会わせたい人がいる』と手紙に書かれていた時、両親は大喜びしていた。
男か女かも書かれていないのに喜ぶ両親は確信していたのだろう。
結婚相手を連れてくるのだと。
手紙の内容を見ても尚、僅かに残る女の可能性を信じて疑わなかった俺だけど、蓋を開けてみればこの通り。
宇髄天元という結婚相手を紹介するために来たと言う。
妹の幸せを心から願っている。
だが、この男が信用に値する男なのかはまだ分からない。
必死に宇髄を庇うほの花だけど、俺も後に引けなくなっていた。
大切な妹が選んだ男だ。だが、心配材料は尽きない。
自分達が男との接点を持たせないようにしていたせいもあるが、ほの花は男に免疫がない。
鬼殺隊の柱ならば、身元はしっかりしているのかもしれない。
だとしてもそう簡単に認めるわけにはいかないと躍起になった。
少しでもおかしなところがあれば、ほの花を任せるに値しないからだ。
辛辣な言葉を投げつけても怒りもせずに苦笑いをするだけ。
その代わりにほの花は初めて俺に泣きながら怒った。
『お兄様なんて大嫌い』
なんて言われたこともない言葉。
『お兄様〜!大好き!遊んでよぉ!』
そう言って足元をうろちょろしていたほの花はもうそこにはいない。
立派な大人の女性となったほの花は昔よりも色気を醸し出していて、隣にいるその男に頬を染めてはにかんだ笑みを向けている。
知らないほの花を見たのがショックだった。
大切に大切にしてきた妹の見たこともない姿を受け入れることができなかったのだ。