第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
──お兄様なんて大嫌い!!
可愛い可愛い妹のほの花。
神楽家の長兄として生まれて、幼い頃より鬼舞辻無惨を倒すために陰陽道をひたすら磨いてきた。
いつか来たる鬼の居ぬ世界。
家族を守るために。
子孫が未来永劫幸せに暮らしていけるために。
俺はずっとずっと己を鍛え上げ続けてきた。
十の頃、歳の離れた妹が生まれた。それがほの花だ。
妹が生まれたということで神楽家が喜びに打ち震えていたのは昨日のことのように思い出す。
神楽家に生まれる女児は代々不思議な能力を持って生まれてくる。その代わり陰陽道の力は弱い。
その事実を聞かされていた俺は幼いながらに妹を守らなければとずっと思ってきた。
ほの花の血が鬼舞辻無惨を倒す一石になることを知っていた俺は弟達と協力してありとあらゆることからほの花を守った。
同い年の男に泣かされたら気を失うまでボコボコにした。
ほの花に気がありそうな男は片っ端から脅して手を引かせた。
父上が連れてきた縁談相手は流石にどうしようかと思ったが、相手が馬鹿で助かった。
此処が鬼に襲撃された時、何とか一命を取り留めた俺たちは怪我のせいで第一線で戦うことは難しくなった。
そのかわりにほの花を産屋敷のところに送り込み、鬼舞辻無惨を倒すために薬の開発をさせようという父上の意見に俺たちは反対した。
ほの花はこの里でのことしか知らない。
所謂箱入り娘だ。
いくら護衛の三人を付けたとしても変な男に手篭めにされたりしたらどうするつもりなのだ。
鬼に狙われたら?
ほの花の陰陽道は俺たちに遥かに及ばない。
体術は女にしてはかなりのものだが、それだけで鬼は倒せない。
心配は次から次へと訪れる。
それでも神楽家の長である父上の言うことに反対することは許されない。
両親が産屋敷に全幅の信頼を寄せているのは知っていたが、俺は会ったこともないその男に嫌悪感があったし、ましてやずっとずっと大切に守ってきた妹をそんな所に送り込むのは嫌だった。
俺の気も知らずにほの花は元気に旅立っていき、二年ぶりに帰ってきたと思ったら男を連れてきたのだ。