第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
今度は俺が頭を下げる番だ。
本当は先ほど灯里さんや兄君達がいる前で伝えたかったが、ほの花が泣き出してしまって叶わなかった。
だが、だからといってこのまま流していい問題ではない。
誠意を持って対応しなければ、大切に育ててきた彼らに申し訳がないし、俺だってキチンとケジメはつけたい。
手を床に置き、頭が畳につきそうなほど下げていると、肩をトンと叩かれた。
「ありがとう、天元くん。顔を上げてくれ。」
言われた通り、顔を上げてみれば宗一郎さんはにこやかに笑っていて、其処に負の感情は見当たらない。
こんな挨拶をしたのは生まれて初めてのこと。
少なからず緊張していたのか、一気に体に血液が流れ出したような感覚に陥る。
「まぁ…正直に言えば…ホッとしてるよ。」
「ホッと…?」
「天元くんみたいに大切にしてくれる人を選んだ娘を誇りに思うし、"嫁ぎ先"が見つかったことに心底ホッとしてる。こう言ってはなんだけど、ほの花はなかなか可愛い顔してると思うんだけどなぁ…。」
首を捻りながら唸り出す彼を見ると、やはり兄君達が縁談を阻止していたことは知らなかったのだろう。
宗一郎さんの言葉は当たり前だ。
確かに背丈が高くてもほの花は可愛い。
"売れ残る"なんて誰もが思いつかないだろう。
まぁ、そのせいでほの花は自分に自信がなくて、一途に俺を愛してくれているのかもしれないから俺的にも兄君達には感謝なのだ。
「いやいや、ほの花は美しいと思いますよ!初めて見た時、目を奪われました。」
「そうか?!そうだよなぁ?!灯里に似て、西洋の顔立ちを気にしているんだが、可愛い顔してると思っていたんだ!それなのにどいつもこいつも断りよって…!…いや、天元くんみたいな男に貰われた方がほの花は幸せか!よかったよかった!」
本当にその通りです…!!
ほの花が此処で知らない男に嫁いでいれば会うこともなかっただろう。
俺も嫁達三人と普通に暮らしていたと思う。
ほの花は此処でつらい思いをしたかもしれない。
でも、誰のものにもならずに俺と出会ったこと自体が導かれたとしか思えない。
俺たちは出会うべくして出会ったんだと。