第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
注がれた酒を一気に飲み干すと喉を潤す。
酒によって体が火照っていく感覚は嫌いじゃない。
ほの花が弱くなければ、晩酌に付き合ってもらいたいくらいだ。
「お、美味いですね。この酒。」
「そうだろう?里の中で唯一の酒蔵で作ってるものだが、帰りに土産に持って行くといい。」
「ありがとうございます。」
そう自信満々に薦めるだけあって、確かに美味いし、飲みやすい。
空になった猪口に再び宗一郎さんが酒を注いでくれると、徐に話し始めた。
「さっきは息子たちがすまなかったね。」
徳利を置くと、足に手を置き頭を下げる彼を慌てて制するがその表情は真剣そのもので動揺することしかできない。
「まさかほの花が結婚相手を連れて来るなんて思いも寄らなかったんだろうな。だが、親としては嬉しい限りだ。灯里も私も凄く嬉しいよ。ありがとう。」
『ありがとう』
そう言われるようなことはしていない。
結婚したくてたまらなかったのは俺の方。
むしろほの花が俺を選んでくれたことに感謝を述べたいくらいなのに、嬉しそうに顔を綻ばせる宗一郎さんに肩の力が抜けていく。
「いや、俺の方こそ…、ほの花を…娘さんを娶りたいとずっと思い続けてきました。言い訳はしません。ご挨拶が遅れてしまったので、兄君達のお怒りは尤もです。」
「最終決戦のことは輝利哉くんから手紙で聞いている。耀哉くんの最期のことも…聞いたよ。君の左目も鬼との戦いによるものだろう?まずは"お疲れ様"と言わせてくれ。君たちのおかげで未来が守られた。」
産屋敷家と神楽家は古くから秘密裏に協力し合ってきた仲。
今回の最終決戦のことは既に知り得ているようで再び深々と礼をすると労いの言葉をかけてくれた。
「いえ、俺は…その前の戦いで重傷を負い、最終決戦は参加できず、お館様…輝利哉様の護衛の任に就いていました。そんな労いの言葉は畏れ多いです。」
いい加減な気持ちで護衛の任に就いていたわけではないが、最終決戦で戦ったのは他の鬼殺隊士であって俺は其処にはいなかった。
そんな労いが少しばかり居心地が悪くて咄嗟にそう言ってしまったが、宗一郎さんは口角を上げて首を振った。