第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
愛おしい女との口づけなど今の俺からしたら拷問そのもの。しかし、触れたい、口付けたいという欲もまたとどまることを知らない。
しばらく、畳に組み敷いたまま柔らかなそれを堪能していると、離れの外からほの花の父である宗一郎さんの声が聞こえて来た。
「ほの花、天元くん。入ってもいいかな?」
その瞬間、勢いよく俺は起き上がると寝転んでいたほの花も体を優しく抱き起こしてやる。
乱れた髪も整えて、自分も身なりを整えると「はい、どうぞ〜!」と、平然を装う。
嫁になる女の実家で組み敷いてあろうことか夜にはいつも通りの情交をしてやろうと思っているなんてどう考えても非常識だ。
だが、頬を染めてふにゃりと笑うほの花が可愛くて毎日自制するのに必死なのだ。
最終決戦後、何のしがらみも無くなった俺たちだったけど、直後はやはり失った仲間が多すぎてぼーっと毎日を過ごしていた。
お互いの温もりを確認し合うようにそばにはいたけど、手放しに喜ぶことはできなかった。
大切な仲間たちが犠牲になったのだ。
流石にすぐに自分たちの幸せを、とはならない。
こうやってほの花との未来を前向きに考えられるようになったのは割と最近のこと。
仲間たちの四十九日が終わった頃だったように思う。
四十九日が終わるとほの花の体調も少しずつ回復して行っていたので、自分たちの幸せについて向き合えるようになった。
一日、…また一日と時が経てば経つほど、ずっとそばにいてくれたほの花を自分が幸せにしてやりたいという欲が出てくる。
仲間たちが守ってくれた未来で、仲間たちの想いを胸に未来を歩みたいと思えた。そうする内に、ほの花の家族に結婚の許しを得なければならないことは当たり前のこと。
ほの花に両親へ手紙を書いてもらい、今回の約束を取り付けてもらった。
『会わせたい人がいる』
そんなことを年頃の娘に言われたら、"会わせたい人"がどんな関係性の人間なのかは簡単に予測がつく。
それ故、兄君達はあれほどまでに荒れていたのだろう。