第41章 【番外編】「娘さんを下さい‼︎」※
やだやだやだやだ…!!
もう、なんであんなこと言うの?!
せっかく来てくれたのに申し訳ないよ。
天元が結婚の挨拶に来てくれたと言うのにあからさまに敵意剥き出しのお兄様達の様子に泣けてきてしまった。
隣で慌てている天元に見兼ねて、離れに避難してきたけど、部屋に入ってからずっと抱きしめてくれている彼に何と声をかけていいか分からない。
涙はとうに止まっていて、天元の心臓の鼓動に耳を寄せている。
心地いいその拍動は私に安心感をもたらせてくれるから。
「…大丈夫か?」
すると、上から降ってきた低音に閉じていた目を開き、上を見上げた。
「何だよ、もう泣いてねぇじゃん。さては、俺に抱きつきたかっただけだな、おい。」
くしゃりと笑って頬をむにむにと突っついてくる天元はいつもの天元。
私の大好きないつもの彼の姿にひとつ息を吐いた。
「う、ご、ごめん。間違ってない、けど…お兄様達がごめんね…!」
「何とも思ってねぇって。大事な妹が初めて連れてきた男を不審がるのは当然だろ?」
ちっとも気にしていない様子でニカッと笑ってくれる天元だけど、「でも…」と私が言葉を続けようとした時、「それより!!」と言いながら肩を掴んできた。
「…え?な、なに?!」
「……あれくらい何ともねぇけどよ。お前を既に手篭めにしてるとバレた時の方が怖ぇわ…。」
「……あ…。」
真剣な顔でそう凄まれて、天元の言葉が頭の中を反芻して私は体を震わせた。
確かにそうだ。
そもそも連れてきただけであんなにめくじら立てて怒鳴り散らしたのに、実際に天元とは"そういうコト"もしている仲だ。
"婚前交渉"など許さん!!!
と言ってくるに決まってる。
お父様とお母様は先ほどの感じだと天元を気に入ってくれているようだし、心配ないだろう。
問題はお兄様達。
特に泰君兄様は自他共に認める妹馬鹿だ。
天元のことを目の敵にしてるのは見ればわかる。
「とりあえず痕は見えるところに残ってねぇから大丈夫だ。」
「あ、ほ、本当?それならよかった…。」
「あとはバレねぇようにしねぇとな…、あの調子じゃぁ口づけすら怒られるぞ。下手したら斬りかかってくるだろうな。」
「…ゴメンナサイ……」